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ブービートラップ
【ショタ 官能小説】

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Richard Hamilton IIIの手記-1

私の名はRichard Hamilton III(リチャード・ハミルトン3世)だ。現在は税法と知財法を専門とする法律事務所Hamilton and Associatesのシニア・パートナーをしている。我が法律事務所は、シリコンバレーのパロ・アルト、LA、およびサンディエゴにオフィスを構えている。一家が3代に渡り、海軍人であったために、私も高校卒業後17才でアナポリス(海軍兵学校)へ進学した。しかし、指揮官としての自分の才能のなさは、兵学校卒業直後に任官した海兵隊の少尉として率いたplatoon(小隊)をNamで全滅させた時に痛感した。同僚や上官たちは、無様な采配で王朝を滅ぼし、自らも戦死した英国国王になぞらえて私を「リチャード3世」と嘲笑した。私はそれに耐えきれず、25歳で退役しロースクールに進学し弁護士になる道を選んだ。

先日、海軍兵学校時代の同窓生で唯一の友人だったJeffから、私の専門からやや外れる2つの事件の受任依頼を受けた。一つは、遺言書の作成である。二つ目は、損害賠償請求訴訟の被告代理人である。

彼は8月上旬に父性確認および慰藉料支払いを求める損害賠償請求訴訟をカリフォルニア州サンディエゴ地裁で提訴された。原告は日米のハーフで、23年前に沖縄の米海兵隊基地で発生したレイプ事件の被害者の娘である。当時Jeffは他2名ともに、強姦容疑で逮捕され、身柄を懲罰房で拘束された。しかし、彼は氏名と所属以外は完全黙秘を貫き通し、軍法会議の陪審は、証拠不十分により「疑わしきは被告人の利益に」の原則に従い、彼に無罪評決を言い渡した。

遺言書の作成は、相続税法が絡むため、うちの事務所の専門領域に関連するが、不法行為法(Tort)は、本来我々の管轄外だ。しかし、この夏、ハーバード・ロースクールを優等で(with honors)卒業した若手の優秀なアソシエイトが我々に加わった。彼は日本の京大法学部も卒業し、日本の司法試験(bar exam)にも合格した日本人だ。原告相手の反対尋問(cross examination)でも、大いに手腕を発揮してくれるだろう。そこで、彼の承諾を条件に、Jeffの依頼を受任することにした。

8月10日に、裁判所書記官、原告および被告代理人が裁判所で顔を合わせ、予備尋問(voir dire)の日程について協議した。その際に、相手方代理人から、慰藉料請求の先決問題としての父性確認のため、PCR法によるDNA鑑定実施の申し出があった。そこで、私は現在銀行に勤務するJeffに直ちに連絡し、検査費用は原告持ちであることを説明した上で、検体資料提出への同意の意思を問い質した。拒否しても、召喚状(subpoena)が裁判所から発付されればいずれは検査は実施される、ということを私が説明する前に、彼はあっさりと資料提出に同意した。

検査は8月15日に実施され、1週間後の8月22日に検査結果が判明した。99.99999%の確率で、父子関係が科学的に証明された。

我々被告代理人チームの当面の作戦は、裁判外での和解に持ち込むことだ。陪審裁判では、原告側であれ被告側であれ、陪審員に対して、いかに有利な心象形成を行うかが勝敗の鍵を握る。一方、今回の事件では、強姦の結果、心神耗弱状態に陥った被害者の娘が原告であるため、一般市民から選ばれた12名の陪審員の中には端から、原告に同情の念を寄せる者が現れることも想像に難くない。

しかし、被告のJeffは、23年前に沖縄で起きた事件の詳細を語ろうとはしない。これでは法廷での防御戦略の見通しが立たない。私は頭を抱えた。

9月の中旬に、Jeffの娘から、から突然、私宛ての大型の封書を受け取った。開封すると「この度、予備役から招集され戦地に赴く運びになったため、遺言書を速やかに作成して欲しい。訴訟追行に関しては一任する。そして、如何なる結果も甘受する。」という趣旨の私に宛てた手紙が出てきた。

遺言書の文面は既にJeffと協議し、確定していたたため、後は公証人に認証してもらうだけだ。

そのとき、私は、大型の封筒にもう1通の封書が同封されていることに気づいた。それを開封すると、中から、23年前に起きた事件の一部始終を克明に記した文書が出てきた。


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