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自転車に乗って
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自転車に乗って-2

ハタモト、なんだって?よく解らない。

なんだか解らないけど、あたしはどうやら心配されたようだった。



翌日。休みのあたしは、疲れつつも家事をこなして夕方スーパーに向かった。
あたしは職場から二駅のところで一人暮らしをしている。
夜なんかちょっと心細いけど、仕方ない。

今日は最近評判のケーキ屋に行こうと思ったのに疲れて無理だった。家事で精一杯。
あたしは情けない。
焦らないように、って思っても巧く行かない。

気晴らししようと思って、いつものスーパーじゃない、少し離れたところに行った。

違う景色は、なんだか楽しい。あたしは少し気が晴れて辺りを見回す。
そんな時、元気満々の声が聞こえて来た。

「いらっしゃいませぇぇえぇぇえ!」
うるさいくらいだ。ここは築地かよ。
そう思ってうるさい店員を見ると、あの高校生だった。

「あれ?」
思わず声を上げると、高校生は暫く悩んでからあたしに気付いたようだった。

「パン屋さんですね。いらっしゃいませ」
勢いよく頭を下げて挨拶をしてから、歯を見せてにかっと笑う。
アンタはポスターにでもなりたいのか。

「ここでバイトしてるの?」
「お陰様で、雇って貰ってます」

パンを買うお金は働いて稼いでたのか。

ごめん。あたしはこっそりと謝る。

「仕事の邪魔だね。頑張って」
「店員さんも」
「ありがとう」

あたしはちらっと、高校生の名札を見た。
平仮名であいかわ、と書いてある。
相川?愛川?どっちだろう。どっちでも良いけどさ。

アイカワ君に別れを告げ、あたしは買い物を済ませた。



それからあたしは何となくアイカワ君の居るスーパーによく行くようになった。
いつも元気に働いている。凄いな。若さか。
あたしに気付くと、アイカワ君はいつものでかい声で挨拶をしてにこやかに笑う。

あたしはこの顔に会いたいのかも知れない。自分の店で会ったんじゃ、あたしは偽物の笑顔をしてるから。

「あの、失礼だけど、あいかわってどう書くの?」

どっちでも良い事だった筈なのに、いつの間にか凄く気になってる。

「相対性理論の相に川で相川です」
「解りづらっ。その例え!」

あたしがつい突っ込むと、相川君は笑った。
「少しインテリを気取りました」
大根出しながらかよ。
「相川か。そうか」
「はい。相川隆之です」
大根一箱を並べ終わった相川君は、新しい箱を開けてまた大根を出す。


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