関与-8
全員が注目をする中、若菜がいよいよ口を開く。
「皆さん、3億円強奪事件を知ってますか？」
いきなりの意外な話にザワザワする室内。なぜ今3億円事件の話をするのか誰も分からなかった。
「マギー、説明して？」
「はい。」
華英とともに最前列に座っていたマギーは席を立ち壇上に上がる。昼間いきなり3億円事件について説明出来るよう調べておけと言われ、資料を何度も読んだマギー。大勢の人間の前に立ち若干緊張した。一度深呼吸をして落ち着くマギー。あまり浮き足立つと若菜にいじられそうなので、背筋を伸ばして凛と立つ。
「3億円事件とは、1968年、大日本銀行、通称大銀を出発した横芝府中工場の従業員のボーナスを載せた現金輸送車が府中刑務所付近で、白バイ警官に扮した犯人に、車に爆弾が仕掛けてあると言われ車外に避難した所、犯人に車を奪われたと言う事件です。数日前、大銀の国分支店長宅への爆弾予告があり、大銀全体にその情報が伝わっており、そんな中で車に爆弾が仕掛けられていると言われた運転手は、心理的に懐疑心が薄れており、そして犯人が車の下に発煙筒を置き、出た煙に危険を感じてすぐに車を離れたとの事でした。しかし車が走り去るのを見た後、異変を感じ白バイを調べた所、それが偽物である事に気づき110番通報をして事件が明るみになりました。偶然にもこの日は歳末特別警戒の初日であり、すぐに緊急配備が敷かれた為、犯人逮捕は時間の問題かと思われてました。しかし現金輸送車に使われたセドリックは捜査の網にかからず、犯人の行方は分からないまま。ただし国分駅付近で検問にかかった、後部座席にジェラルミンケースが積まれたカローラがいましたが、検問を突破されてしまいます。現金輸送車はセドリックであった為、警察は本気でカローラを追わなかった。２日後、強奪現場付近の集合住宅の空き地でシートをかぶせられたセドリックの現金輸送車が発見されました。この空き地には以前から数台の乗り捨てられた車があり、住民も特に気にしなかったのが発見の遅れに繋がり、警察は車の乗り継ぎを想定していなかった為、ずっとセドリックを追っており、まんまと犯人の逃走を許してしまいました。結果的に国分駅付近で検問を突破した多摩5ろ3919のカローラ、通称多摩五郎こそが犯人の有力候補だったとされてます。その検問突破以降、犯人の足取りは全くつかめませんでした。」
3億円事件、殆どの刑事らが聞いた事はあるが、特に若い刑事らにとっては内容までは詳しく理解していなかった。そんな刑事らにとってマギーの説明は非常に分かりやすかった。