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思い出の初体験
【幼馴染 官能小説】

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譲司を変えたもの-1

そんな時、新しい客が譲司のいるホストクラブへ現れるようになった。

彼女は毎回来るたびに指名するホストを変えた。
何が彼女の目的なのか、オーナーの南野には全く理解できなかった。

ただ、毎回、初めてのホストを相手に、贅沢の限りを尽くしていく。
固定客がつかないホストたちにとっては、まさに女神のような存在だった。

最高級のシャンパンを何のためらいもなく、
初顔のホストのためにオーダーしながら、
彼女はそのホストを口説くわけでもスキンシップを求めるでなかった。
むしろ口数も少ないままにホストの話に時折相槌を打ちながら、店にいる。
たまたまテーブルについたホストが次回の指名をそれとなく匂わせても、
彼女は笑みを浮かべるだけで決して約束しなかった。

そして数日後にはまた店を訪れ、入り口の写真を見ては、
また別のホストを指名するのだった。


彼女が譲司の店に通うになってすでに1か月が過ぎようとしていた。
譲司以外のホストはほとんど指名をされ、
そして再指名されたホストは誰もいなかった。

そのことはホストたちの間でも話題になっていた。
彼女の目的は一体何なのだろう。
そして、週に2回ほどのペースで、一日に数十万を使う女。

たまたま自分の誕生日にあたったホストは、
彼女からのプレゼント攻めにあい、
たった1日でその月のナンバーワンになるほどの売り上げを記録していた。
しかしその次に訪れた時には、彼女はまた別のホストを指名する。
まるでホストのために金を使っているような不思議な客だった。


「謎なんですよ。譲司さん。」
譲司の実年齢を知らない若いホストが、リーダー格の譲司に話しかけてきた。
「彼女、一切自分を語ろうとはしないんです。」
「確かに。何を聞いてもうまくはぐらかされるな。」
「そもそもいくつなんだ?」
「その話題も、ある意味タブーなのかもな。」
「でも、見た目は30代、いや、40代?」
「いや、服にもよるけれど、20代って言われても、オレだったら信じるな。」
「でも、話の仕方とか落ち着いた態度からは、もう少し上かも。」
「やっぱり30代?」
「うん。そのくらいだろうな。いってても30代後半っていうところだろう。」

「資産家の遺産をもらった未亡人?」
「いや、自分で会社か何か経営しているんじゃないか?」
「う〜ん。でも、確かに何か事業をやっているようなやり手には見えないな。」
「ああ。やり手ならもっと冷酷さみたいなものを感じるんじゃないのか?
 彼女はものすごく楽観的なものの見方をするだろ?」
「ああ、でも、半面、どこか影があるような。」

「そうそう、オレ、聞いてみたんすよ。何か隠しているみたいですねって。
 そしたら、そうね。でも、何を隠しているのか、自分でもわからないの。って。
 いや、それが全く演技とかじゃなくって、
 本当にわからないっていうか、困っているっていうか。」
「とにかく、謎の女、です。」

「譲司さん。一度、彼女についてみてくださいよ。」
「そうっすよ。第一、譲司さんを指名しないっていうのも謎ですけど。」

ホスト仲間たちとの会話に加わりながら、
譲司はその謎の女に少しだけ興味を持った。
(みんながそこまで言うのなら、今度来た時にテーブルについてみるか。)

金に糸目をつけない豪快な遊び方をしながらホストには何も求めないというその女と、
一度面と向かって話をしてみたい、譲司はそう思った。


その機会は意外に早くやってきた。
開店して間もなくの客もまばらな店に、彼女は現れたのだ。
彼女はいつものように今までに指名したことのないホストの名を口にした。
譲司はそれと察すると、彼女が席に着くと同時に、彼女のテーブルについた。

「もしよろしければ、ボクとお話ししていただけますか?」
譲司はさりげなく自分をアピールし、彼女の横に立った。
譲司を見上げた女は譲司をしばらく黙ったままじっと見つめた後、ぽつりと言った。
「そうね。あなたとはまだお話ししていなかったわね。」

その言葉を彼女のОKと受け取った譲司は、すぐさま彼女の隣に座り、話し始めた。
「カズです。ようこそお越しくださいました。」
「カズ、くん。そう、カズ君っていうのね。よろしく。」
「失礼ですがお名前は?」
「名前?忘れちゃったのよ。好きなように呼んで。」

譲司はこのことか、と思った。
全く自分の正体を明かそうとしない女の正体を暴いてやりたい、
ふとそんな気持ちになった。

「じゃあ、なんて呼ぼうかな。今風の、はやりの名前にします?それとも…。」
譲司はさりげなく彼女の膝の上に手を置いた。
彼女は自然な動きでその手の上に自分の手を重ねた。
短い時間の中で互いのぬくもりが交差した。


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