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THE 変人
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急展開-3

「瀬奈にとっては海斗君と過ごした日々はきっと竜宮城のように穏やかで安らぎの時間だったに違いない。だから瀬奈が言う竜宮城とはきっと海斗君の所だろう。ちょっと電話してみるよ!」
康平は海斗に電話をする。不思議なものだ。瀬奈が海斗の所へ向かったんじゃないかと思うと安心する。正直海斗の事は良く知らないし、1度しか会った事はない。悪く言えば得体の知らない男だ。しかし何故か海斗になら瀬奈を任せても大丈夫だと思える。瀬奈があれ程心を許しているのなら大丈夫だと思えるのは、少しは娘を信頼できた証拠だと思った。

「ご無沙汰してます。どうされましたか…?」
電話に出た海斗は不安そうな声をしていた。自分からの電話と言う事は瀬奈に何かあったのではと悟った様子が伺えた。と言う事はまだ瀬奈は海斗の所へは到着していないと言う事が分かって。
「突然すみません。今朝、出かけると言って家を出た瀬奈が帰らず、調べたら部屋の机の上に書き置きがあり、竜宮城へ行くと書いてあったんだ。瀬奈にとっての竜宮城とは海斗君の事なんじゃないかって。海斗君の所しか思い浮かばなくて電話したんです。その様子ではまだ行ってないようだね。」
「ええ、まだ来てません。竜宮城ですか…。そう言えば竜宮城の話をこっちにいるときにした事ありました…」
「そうですか。海斗君、もし瀬奈が行ったら守ってやって欲しい。私達は何の邪魔もしない。瀬奈がしたいようにしていい、そう思ってるんだ。」
「で、でも…」
「正直、君の事は良く知らない。しかし君を信じられるんだ。私なんかよりも瀬奈を幸せに出来るってね。瀬奈が君を見る目を見た時、いかに君を必要としているのか分かったんだよ。君になら瀬奈を任せられる、そう思ってる。」
父親の愛情をヒシヒシと感じる口調であった。
「私達も今からそっちに向かうよ。明日の朝になるかも知れないが、最速で行く。もし瀬奈が来たら宜しく頼むよ。」
「わ、分かりました。」
そう言って電話を切ると、千城を目指して康平と美香は出かけて行った。

「瀬奈が来る…」
嬉しいに決まっている。しかし少しだけ何かが引っかかる。両親が何の反対もしないなら、堂々と自分の所へ行くと言えばいい。両親だって止めたりはしないだろう。それを行き先を濁すような、竜宮城と言う表現で表した事が気になってはいた。
「でも、抱きしめたいよ…瀬奈。」
抑えていた瀬奈への想いが一気に沸き上がる。夜なのにカーテンを全て開け、いつ瀬奈が来ても分かるよう、常に外を気にする。
「会いたい…、早く会いたい…」
変人が、ただただ瀬奈を抱きしめたいと言う純粋な気持ちに満ち溢れた瞬間であった。


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