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The melody
【青春 恋愛小説】

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The melody-1

眠れない夜がある。一年に一回だけ、なぜか眠れなくなる。仕事で疲れてるはずなのに。それは決まって夏だった。そんな時、私は部屋の窓から屋根へと移り、携帯電話を片手に星空を見上げた。

そして今日も、零れそうな星空の下、私は昔の記憶を鮮明に思い出す。


あの頃、私が一番輝いていたのも、夏だった。
初めての恋人…初めてのデート…全てが新鮮で私は毎日幸せだった。そして、夜になれば私は自分の部屋にこもり、買ってもらったばかりの携帯電話を握り締めていた。なぜなら毎日九時を過ぎると、私の携帯電話は『彼専用』の着信メロディーを奏でるから。私は、すぐに電話に出る。電話越しの「起きてる?」から始まる彼の声が大好きだった。

毎日毎日、飽きもせず、お気に入りの着信メロディーが聞こえると、私はすぐに跳ね起きて彼と他愛もない会話を楽しんでいた。何でもいい、話すことはたくさんありすぎた。外が明るくなるまで話していたこともあった。
幸せだった。声が聴けるだけで、私の心は満たされた。ただ、それだけで満足だった。

だけど、終わりは突然やってくる。


『大嫌いっ!』


たったそれだけのことで、私たちは簡単に壊れてしまった。
お互いを知らなすぎた。経験の浅さ故、相手の考えを知ろうともせず、自分が正しいと思い込み、貫き通そうとしていた。
…私たちは幼すぎた。

その日の夜も、私はこうして屋根の上にいた。部屋の中であのメロディーが流れていたが、私は聞こえないフリをした。途切れてはまた流れ出す着信メロディー…私は耳を押さえ目を瞑った。


ゆっくりと目を開ける。
私は、あの着信メロディーを数年ぶりにサイトからダウンロードし聴いてみた。耳元で流れる懐かしいメロディー。あの頃の自分に思いを馳せると胸の奥が切なく締め付けられる。

メロディーが止まった。ワンコーラス終わったのだ。ディスプレイに『保存しますか』と映し出されている。私は少し考えて『いいえ』を押した。


私は履歴から番号を探し、通話ボタンを押した。
『もしもし』
彼はすぐに電話に出た。
「起きてる?」
『あぁ、起きてるよ。これから寝ようかと思ってたんだ』
「そっか…私ももうすぐ寝るところ。急に声が聞きたくなっちゃって…」
『どうしたんだよ。声ならいつでも聞かせてやるから』
「ありがとう、明日も仕事でしょ?頑張ってね」
『あぁ、そっちもな。頑張れよ。それじゃあ、おやすみ』
「おやすみ」


私は星空を見上げた。星たちはあの頃と同じように私を見下ろしている。この星空はどこまでも永遠に続いていく。微妙な変化を繰り返しながら…。
だから私も…。


「…おやすみ」


夜空にそう言うと、心地よい微睡みの中、私は部屋に戻っていった。


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