兄妹の気持ち-5
「そうね。言葉では伝わらないような気がして、何とかしなくちゃって思う時かな。」
「お袋にもあった？そんな時？」
「そうねえ。わたしは自分から抱いて欲しいと思った時は、そう言ってきたつもり。
でも、相手が無理だと拒絶すればそれ以上は迫ったりはしないわ。
まあ、大人になって、恋人同士や夫婦間のアレンジとして、
強引にとか、嫌がるのを無理やりって言うのはあるけれどね。」
「お袋たちはそんな楽しみ方もするわけ？」
「お互いに愛し合っているという大前提があってのことよ。
レイプまがいのプレイや相手の嫌がることをわざとしたりするのも刺激的だわ。
恵介、そんな場面も見てみたいわけ？」
「ああ。それも確かに興味はある。
現実的にはなかなか見ることなんてできないだろうからな。」
「まさか、そんなこと、してないでしょうね？」
「してるもんか。これでも相手の気持ちを第一に考えるタイプなんだぜ。」
「だったらいいけど。
まあ、相手との気持ちが完全に通うようになったら、
焦らずに徐々に相手に理解させていくことね。」
「ああ。それまでは見るほうだけにしておくよ。ただ、今はいい。そのうちにな。
とにかくこのことが解決しないとさ。」
「そう。じゃあ、見たい気持ちになったらそれとなく教えてね。」
母親の目の奥に妖しげな炎が一瞬だけともり、すぐに消えた。
「とにかく、若いうちは相手の気持ちを尊重することが第一よ。
相手の同意のないレイプは犯罪だもの。
話が逸れたわ。相手の言葉や行動の裏にある、本当の気持ちを見抜かないとね。」
「本当の気持ちか。なかなか難しいな。」
「そうね。なかなか人には見せようとはしないからね。
だからそのためにはやっぱり相手をよく知ることよ。
どんなことを考える女なのか、何を大切に考える女なのか、何を望んでいる女なのか。
まあ、それでも推測の域は出ないんだけどね。」
「お袋と親父はどうしているのさ？」
「そうね。話すことかしら。
何か気になることがあったら勝手な推測をするんじゃなくてまずは聞く。話す。
最初のうちはそれが大事かな。
そのうちに、たいがいのことはわかってくるものよ。」
「そっか。二人の間に隠し事とかはないの？」
「隠し事？ないわ。なくすようにしたの。」
「じゃあ、なんでも知ってるわけだ。」
「ううん。それでもお互いに秘密にしていることはあるわ。」
「なんだよそれ？隠し事と秘密は違うのかよ。」
「わたしたちの間ではね。隠し事は相手への裏切りで嘘をつくこと。
秘密は相手への信頼があっての上でで刺激。欲望のエッセンスよ。」
「あ〜あ、余計なこと聞いちゃった。話がややこしくなってきた。」
「とにかく、早く美沙希と仲直りしなさい。
美沙希だって恵介とうまく話せなくなって辛い思いしてるんだから。
ただ、可愛い妹だからこそ、
最初は大切な人と、っていう恵介の気持ちは美沙希にも伝わっていると思うわ。」
「お袋、美沙希にはその話、したの？」
「ええ、兄妹に違う話はしないわ。
まあ、男と女の違いや年齢の違いがあるから全く同じではないけれど。」
「そっか。ありがとう。」
「もういいの？」
「ああ。十分だ。」
恵介は吹っ切れたような表情で立ち上がった。