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私は英語が嫌いだ
【SM 官能小説】

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ホームステイ-1

 私は英語が嫌いだった。中学生の頃から、なぜ日本人に英語を学ぶ義務があるのか疑問を持っていた。正確に当時の気持ちを表現するなら、なぜ英語しか選べないのかという不公平感に反発していたのだろう。
 英語を使う人間にも、私はある種の選民思想を感じていた。世界中を自国語で通そうとする英語圏の人間の態度は傲慢だと思ったし、英語さえできれば後は要らないなどと豪語する日本人も、専ら無知に感じられて仕方なかったのである。
 アメリカ合衆国が日本を占領していた歴史的事実も、反発の一因だったろうし、イギリスに対しても、私には魅力が感じられなかった。
 そんな人間に、英語ができよう筈がない。
 ところが、英語は欠かせぬ試験科目であり、就職先をも左右する。私は英語ができないことで、劣等感から離れたことがなかった。

 運命というものは分からない。
 私のもとに、ニュージーランドの知り合いの子女をしばらく預かってほしいという依頼が、上司からあったのである。
 先方は夏休みであり、子供だけで来るのだが、あいにく上司は一ヶ月の海外出張に合わせ、家族ぐるみで出かけるのだそうだ。その子たちをも上司は連れて行こうと提案した。しかし、その子女とその保護者とが、日本に滞在することにこそ意味があると言ったので、困った上司は、私のところに話を回してきたのだそうだ。
 三十代半ばの独身である私なら、どうせ暇だろうという上司の算段である。更に言えば、日本人にはホームステイを引き受けてくれる家が見つかりにくい現実もあり、日頃から頼みやすい私に白羽の矢が立てられたものらしい。
 私は英語は嫌いだったが、子供は好きだった。それも、性的に強い関心を持っていた。人に言えない病理が私にはあったのだった。

 ニュージーランド人の子女は、上から十三、十二、十一の年子の三姉妹で、みな美しかった。できない英語も、子供相手なら何とかなるだろうと、私は楽観的に構えた。
 普段は使わない借家のふた部屋を私は彼女らに当てがうことに決め、自分の荷物は一部屋にまとめておいた。
 彼女らの姿を目にした時から、私は早くも、彼女らの汗のしみた布団や、汚れた洗濯物やらを想像して、花咲く春が訪れるような喜びを心に覚えていた。

 初めのうちは、安心させるために、出来るだけ紳士らしい振る舞いを保たなくてはならない。私はそう思った。
「Hello, glad to see you! I’m Shigeru.」
「Pleasure, I’m Beth.」
「Judy.」
「Carol.」
 それぞれと握手して、私たちの生活は始まった。
 二十代の頃、私はフランスで三ヶ月過ごしたことがあった。或る伝手によって、農場に滞在していたのだが、その時の経験から、西洋人との付き合い方を少しは学んでいるつもりだった。それは、案外気さくなもので、慣れてしまえば日本人こそ面倒くさいと思われてくる。フランス語圏と英語圏とでは違いがあって然るべきだとは言え、アジアの果ての日本まで来てしまえば、もうひとくくりにヨーロッパ人の範疇である。この姉妹との生活も、毎日外国へ行くような、日常の憂さを忘れられる良い機会になることを私は願った。


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