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永遠の契り
【熟女/人妻 官能小説】

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永遠の契り-1

1.余命一年半
 エックス線写真を見つめていた奥村医師が、振り向いた。
「この左の肺に見える影に、覚えがありますか?」
「子供の頃に結核に感染して、自然快癒した後が石灰質になって残っていると言うことは聞かされていますが、それがそれかどうかは分かりません」
「念のために、CTスキャンを撮ってみましょう」
 急性胃腸炎で激しい嘔吐をした後、一月も経つのに咳が一向に収まらない。元々親譲りで喉が弱く、風邪が直っても咳だけが数週間残ることが多かった。
 しかし、一ヶ月も続くのは異常であった。寝ようとすると特に激しい咳が出て、寝付かれない。堪り兼ねて医者嫌いな私が、近所の奥村医師を訪ねた。
 奥村医師の検査依頼書を持って紹介された検査所を訪ね、生まれて初めてCTスキャンなるものを撮った。横になったまま、機械の中に通され、数回息を止めて、撮影は20分ほどで終わった。
 奥村医師に送られてきたCTスキャンの結果には、癌らしいと言うコメントが付けられていた。精密検査のため、再び医師の紹介状を持って御茶ノ水にある大学病院に行った。
「賀川さん、以前に、アスベストを継続的に吸い込んだような経験はありませんか?」CTスキャンの画像をつぶさに見ていた専門医が、椅子に戻り、対面する正彦に尋ねた。
「50年前から自動車会社をやっていたので、ブレーキの整備でシューの粉塵はだいぶ吸っていますねえ。今と違って、当時のシューはアスベストを使っていましたから、・・・」
「うぅぅん、この左肺の影は胸皮と言って肺を囲っている皮ですが、4センチ四方に広がっています。胸皮の癌はアスベスト癌に多く、40年50年と言う潜伏期間を置いて発症するんです。隠しても直ぐに分かってしまうことなので正直にお話しますが、アスベスト癌に対する治療法は残念ながら現在のところ無いんですよ」
「そうすると、余命はどのくらいですか?」
「一年半」
「そうですか」
 聞いても特にショックは無かった。76歳まで生きてきて、親よりも長生きした。やりたいことは一通りやってきた。そうか、いよいよか。遺言書も書いてある。葬式の写真を探すのが面倒だな。誰に知らせるか、名簿を作らないとな、そんなことが頭をよぎった。


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