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THE 変人
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なぜ…-5

「三上さん!今、福岡駅から瀬奈さんらしき女性が駅に現れ電車に乗ったと言う情報が来ました!」
とうとう警察から電話があった。康平は思わず立ち上がり声を張り上げる。
「ほ、本当ですか!?と言う事は新幹線ですか!?」
「いえ、在来線らしいです。」
「今、その電車はどこに??」
「おそらく下関方面だと思いますが、職員の話だと茨城行きの切符を購入したとの事です。普通列車の料金でだいぶ遠くまでの切符を買ったとの事で窓口の職員が珍しいなと覚えていたそうです。特急料金ではなくていいんですかと聞いたら、ハイと答えたとの事で。」
「茨城…?瀬奈が失踪してた時に居たトコか…。と言う事はその時に世話になった人の所へ向かっているのか…。で、その電車は今どこあたりを??」
「恐らく博多から鹿児島本線で門司まで行き山陽本線に乗り継いで、今頃下関から岩国に向かっている頃だと思います。そろそろ岩国に着く頃かと。」
「広島まで行かれるとその先行方をくらそうとすればいくらでも交通手段があるだろうから、何とか本州へ渡る前に見つけないと…。」
「取り急ぎ岩国に警官を待機させてあります。あ、ちょっと待って下さい??さっき門司を出た電車に瀬奈さんらしき女性が乗ってると車掌から連絡があり副車掌が確保するかどうかの連絡がありました!」
「ほ、本当か!?瀬奈に間違いないですか!?」
「現在確認に向かったとの事です。また連絡します!」
「頼みます!!」
電話の向こうが慌ただしくなって来た。しかしようやく瀬奈の居場所が掴めそうな希望が生まれた。しかしまだ安心は出来ない。康平はスマホを握りしめ警察からの連絡を待つ。
(頼む!瀬奈であってくれ…!)
康平は必死で願い続けた。

電車の中、副車掌が前から瀬奈にゆっくりと近づく。美しく穏やかな表情の女性を、とても捜索中の女性と見るのは難しい事であった。副車掌は人違いかも知れない…、そう思いながら声をかけた。
「あの、恐れ入ります。新藤瀬奈さんでしょうか?」
一瞬微笑が消えたがすぐにニコッと笑い答えた。
「いえ?違いますが?」
「そ、そうですか…。失礼致しました。」
特に不審な様子は無かった。しかし見落としたのは手が微妙に震えていた事であった。しかしとっさに隠した為、気付く事は出来なかった。
(やっぱ違うよな。)
やはり人違いだと思いながら頭を下げて戻って行った。
(しっかしすごい美人だな。芸能人かな??)
副車掌が一際輝く女性をもう一度見ようと思い振り返る。
(ん??)
振り返ると席に女性の姿は無かった。視線を動かすと通路を慌てて走り後ろの車両に移動しようとする女性の背中が見えた。副車掌は慌てて車掌に連絡する。
「名前を確認したところ違うと言いましたが、戻ろうと思い少し離れて振り返ったら後ろの車両に逃げるように移りました!!」
「了解!取り敢えず追いかけてくれ!」
車掌はそう指示を出して連絡をする。
「きっとその女性に間違いない!確保してくれ!」
「了解しました!」
すぐさま車掌から副車掌に確保の指示が出された。瀬奈は一番背後の車両まで追い詰められた。行き場を失い振り返ると車両に入ってくる副車掌の姿が目に映る。しかし瀬奈の目は怯えていなかった。むしろ力強く副車掌を見つめていた。
(こんなとこで私の未来は奪わせない!私は海斗の元へ行く!絶対に!!)
瀬奈は自分の未来を守る為、全ての事に対して戦う決意をしていたのであった。


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