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THE 変人
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なぜ…-12

「遠いところ、誠に申し訳ありませんでした。お仕事もあるところ、迷ったのですが、瀬奈が意識を失いながらも葛城さんの名前を口にしていたので、今の娘に力を与えてくれるのはあなた様しかいないと思いまして。本当に申し訳ない。」
深々と頭を下げる康平。
「どうか頭を上げて下さい。私の方こそ速やかに警察に連絡して身元をはっきりさせてお戻しするべきところ、それを怠ってしまいました。そうすればもっと早く親御さんの元へ帰す事ができたはずです。申し訳ありません。」
海斗も頭を下げる。

「葛城さんこそ頭を上げて下さい。私は返って瀬奈の為には良かったんじゃないかと思ってるんですよ。瀬奈はあんな状態でもあなたの名前を呼んでいた。きっとあなたに何が光明を見出したのではないかと思うんです。あの子は元々慎重な子です。そんなあの子が僅かな期間であなたに心を開いたと言う事は、きっと瀬奈を大事にしてくれた証拠だと思います。少し聞きたいのですが、あなたは瀬奈にどんな事をしてくれたんですか?」
「俺は彼女としっかりと向き合っただけですよ。取り乱して発狂して何度も死ぬかと思いました。でも目の前の彼女をどうすれば落ち着かせる事ができるか、毎回その都度考えました。殴られながら、何故彼女は俺を殴るんだろうと色々理由を考え、そしてそれが自分の身から女の存在を感知した時に殺気立ち暴れると言う事が分かりました。元に自分のシャツから会社の同僚の女性の香水の匂いがした時に彼女は激しく取り乱しました。俺はその誤解を解く為にわざとその同僚と瀬奈さんを会わせました。初めはやはり暴れましたが、時間をかけてただの会社の同僚だと分かってもらってからは、同僚の女性と会っても取り乱す事はなくなりました。それどころか2人で連絡を取り合い一緒に買い物までする仲になったんです。手がつけられないと見放すのは簡単です。でも目の前にいる悩める人間を見放す事は俺には出来なかった。物事には必ず因果関係があるもので、必ず原因、理由があるもんです。仕事をする上でも解決出来ない問題ってそうはありません。真剣に取り組めば必ず解決策はあるもんで、釣りをして釣れない時には仕事以上に考えるんです。場所?エサ?棚?地形?みたいな。自分は必ず一匹は釣らないと気が済まない性格なんで、一匹でも釣らない限り絶対に帰りません。瀬奈さんとの出会いも台風の中釣りに行って全く釣れなく、でも意地になって釣りをしていた所に大物がかかり、やっぱ諦めなければ報われるんだと思ったら、それがとんだ大物で、まぁお嬢さんだった訳ですが…。」
途中までカッコいい話をしていたがオチが康平にとっては笑うに笑えない話になってしまい、海斗は申し訳なさそうに頭をかいていた。


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