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THE 変人
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なぜ…-11

永遠に続いて欲しかったキスがゆっくりと幕を閉じた。瀬奈にとっては今、自分の人生にも幕を下ろした気持ちであった。瀬奈は海斗に務めて笑顔で言葉を口にしようと思ったが、悲しくて涙も溢れる。
「どうしてだろ…。何故私は海斗と普通の状態で会えないんだろうね…?」
「え?」
「初めはどこの誰だか言えない状況で海斗と出会った。今はこんなボロボロの状態で海斗と再会した。今度こそ本当の自分で海斗と出会えると思ったのに、結局こんな状態でしか会えなかった。きっとこれからもそうだと思う。私は普通の状態で…、海斗に何の障害もなく会える事が出来ない運命なのかも知れないね…」
「そんな事、ないよ!怪我が治ったらきっと笑顔で再会する事ができるさ。」
「そうなったらどんなに嬉しい事かな…。私は海斗が好き。愛してる…。海斗となら私は幸せになれる。私が幸せになれる唯一の人…。でもきっと私は幸せにはなれない。こんな体になって分かったの。私はきっと幸せを掴む事を永遠に出来ない人間なんだって。」
「そんな事はないよ。自分を諦めるなよ…。」
「ありがとう…。でも私、今、もうこれ以上幸せはいらないってぐらい幸せ。海斗のおかげ…。ありがとう。」
「瀬奈…」
瀬奈は出来る限りの笑顔を見せた。
「海斗、ごめん。ちょっと疲れたみたい…。寝るね…。」
「あ、ああ…。」
瀬奈は目を閉じるとすぐに寝てしまったようだ。海斗は人生を諦めるような言葉を口にした瀬奈が心配でならなかった。目を閉じ包帯だらけの瀬奈を見つめ複雑な表情を浮かべた。

「葛城さん、ありがとう。」
康平が頭を下げた。
「いえ。」
同じく頭を下げる海斗。瀬奈が意識を失いながらも海斗の名前を口にしている姿を見て連絡先を調べ、携帯に電話をしたのであった。海斗はついさっき到着したばかりだ。康平には海斗が到着した事と瀬奈が意識を取り戻した事がただの偶然だとは思えなかった。しかしまだ海斗の事を良く知らない。瀬奈が失踪していた短期間に愛してやまない存在となった海斗に一目置いている康平。いかにして瀬奈の心を開いたのか知りたい気持ちでいっぱいであった。

康平は集中治療室を出て海斗と一緒にラウンジに行きコーヒーを飲みながら会話する事を望んだのであった。


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