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THE 変人
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なぜ…-1

「新藤瀬奈はあの時、死んだのよ…。崖から飛び降りた時、あの荒れ狂う海にのまれて新藤瀬奈は死んだの…。

じゃあ私は誰?何のために生きてるの?

そうだ…、私は葛城海斗って言う男性に出会って、彼と新たな人生を送る為に生きる事にしたんじゃないの…。どうして福岡なんかに戻って来たんだろ…。ここは私の居場所じゃない…。私は海斗と一緒にいる為に生まれ変わったはず…。

帰ろう…、海斗のもとへ…」

有樹の部屋を飛び出した後、瀬奈はあてもなく歩いていた。絶望と言う荷物を背中に背負い、ブツブツと呪文を唱えるように小さな声で呟く女を、すれ違う人間達は気味悪そうに避けて行った。瀬奈はそんな他人の目など全く気にせずに、家に戻るとありったけの金を財布につめ、鍵もかけずに去って言った。

瀬奈が去った後も優衣の体は震えていた。
「な、何なのよ…あの女…!頭おかしいでしょ!?」
まだ今にもドアの向こうから現れそうな気がしてならなかった。有樹も同じだ。しかし豹変する瀬奈に免疫のある有樹は優衣よりは恐怖も少なかった。しかし包丁で人を傷つけるまでする瀬奈は初めて見た。ふと我に帰りタオルを巻き腕を止血する。

「てかマズいぞ…、マズいぞ…」
有樹は焦っていた。何を焦っているかと言うと、それは康平にであった。この状況を康平に伝えるのが非常に怖かった。せっかく戻って来た瀬奈を、また浮気が原因で発狂させてしまった事に対して言い訳はつかない。しかし伝えなければすぐに分かってしまうのは明白だ。理由は後にして瀬奈がまたどこかへ行ってしまった事だけを伝えよう、そう決めた。

「お前、瀬奈に何をした!!」
滅多に怒らない康平が、スマホのスピーカーが壊れてしまいそうなぐらいの迫力で怒りを露わにした。その迫力に押され、有樹は思わず正直に答えてしまう。
「すみません…う、浮気を…」
「お前…またか!?」
またかと言われた事に驚いた。優衣の事は瀬奈も自分も康平には伏せておいたからだ。なぜそれを知っているのかと混乱する。

「お前、優衣があんなになった理由を私が知らないとでも思ったか!?まだ優衣とか言う女と繋がってたのか!この馬鹿者が!?」
「も、申し訳ありません…!」
電話越しだと言うのに背筋を伸ばしそのまま腰を90度に曲げ謝罪する。
「瀬奈が帰って来て心を入れ替えてサポートしてくれると信じたのに、お前は…、よくも期待を…瀬奈を裏切ってくれたな!もうお前には頼らん!瀬奈は私達が守る!!」
康平はそう恫喝し一方的に電話を切ったのであった。


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