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想いの届く日
【幼馴染 官能小説】

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想いの届く日-6

6. 再会.
 妻に先立たれ、一人娘は結婚をして外に出た。三度の食事の支度が面倒で、最近はデパ地下やコンビにで間に合わせることが増えた。料理は嫌いではないが、一人分の料理は材料の買い方が難しく、どうしても多めに作って何回も暖めなおして食べるようになる。

 池袋の東武デパートの食品売り場で、夕食の刺身セットの品選びをしていた。
 ふと背後に人の気配がした。
「あのう失礼ですが、秀樹さんじゃございません?」
「はあっ?」
振り向くと、鬢に白髪の混じった初老の女性が立っている。

「えっ・・・美代子・・・??」
「お久しぶりです。その美代子です。お元気そうで、何よりです」
あれから50年が経つ。

「お久しぶり。貴女もお元気そうで〜昔のままですねえ、相変わらずお綺麗で〜〜」
「何を調子のいい事言って、本当にもう・・・」
 通路に立ち止まる二人の脇を、客がすり抜けて通る。

「ここじゃ邪魔になるから、どこかでお茶でもどう?」
「そうね」
 デパートを出ると、直ぐ隣にあるグランド・ホテルのバーに誘った。
 
 年の功か、懐かしさのあまりか、50年前の恥ずかしい思いがそれほど気にならない。カウンターに席を取り、僕はダイキリを、美代子はジントニックを前にした。
「あの時は、恨みましたよ」
「どうも済みませんでした。言い訳にもなりませんが、若すぎたんですねえ、でも会えて嬉しい」
「本当に嬉しい?」

 美代子は、結婚をして男女の子供にも恵まれ、夫には数年前に死別をして、ある意味で、悠々自適の一人暮らしを楽しんでいるという。

「秀樹さんは、あの時、どうして突然に私を捨てたんですか?モノにした女に興味がなくなったんですか?」
「それは誤解だよ。僕は、美代子さんが嫌いになったわけじゃないさ。何であの時妊娠したなんて嘘を付いたんだよ」
「だって生理が止まっちゃったから、妊娠したと思ったのよ。私としてはこれで秀樹さんと結婚できると思って嬉しかったのよ」
「それが間違いの元さ、だって未だ結婚はしないって言ったろう?」
「そうだけでど、友達にあなたを婚約者だって言ってたから、一寸焦ったのかも・・・」

「僕は妊娠したら困ると思って、コンドームを使ったんだよ」
「何それ、初めての契りにコンドーム?」
「だって、妊娠したら困るだろう?騒がずに少し待ってくれれば結婚できたのに、お母さんにまで知られて、もう顔も合わせられやしなかった」
「だってぇ〜本当に妊娠したって思っちゃったんだから」

「それにあの時、挿入に失敗したから、破瓜はしていないんだよ」
「それは私も後で気がついたんだけれど、あの時はそんなこと考えもしなかったのよ」
「破瓜されたかどうかって、女には分からないものなのか?」
「私だって始めての経験で、当然結ばれたと思うでしょう?」
「挿入に失敗なんて、男としては恥ずかしくて人に言えないんだ、まして当事者の美代子にそんな恥ずかしいことを・・・」
「あの時にはっきり言ってくれれば良かったのに・・・結婚したときに初夜に出血して、変だなって気がついたのよ。でももう他の人と結婚しちゃったんだから、後の祭りよ」

「僕も美代子さんが好きだったし、二人とももう少し落ち着いて対応が出来たら僕たちは結婚していたと思うよ」
「今日、秀樹さんに会えてよかったわ。これで、長年の胸のつかえがいくらか収まったわ」
「初恋は成就しないと言われるけれど、若さゆえの無知が要らぬトラブルを起こしてしまうんだね」




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