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ある街ある嬢
【エッセイ/詩 その他小説】

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生きる。-1

生きる。

社会の底辺。どん底。
女の地獄。

風俗って、そんな風に言われてると思う。
なるほど正しい。
それを否定はしない。

確かに、出会って数分の相手(しかも選べない)の唇や局部を舐めて、精液にまみれる。
なにが幸せなものだろう。そのどこに幸せが感じられるだろう。
その通りだ。

堕ちるところまで堕ちちゃったなぁ。
それが最初の感想である。
今はどんなに楽しんで風俗やってますって嬢でも、それが最初の感想のほとんどだと思う。
わたしだってそうだった。
決して最初からニコニコ笑顔でこの仕事ができたわけではない。
帰って何度も何度もシャワーで身体中を流して泣いた日もあった。
二度と出勤するもんかとバカみたいにお酒を飲んだ日も、自己嫌悪に沈んで浮かんでこられなくなった日もあった。

じゃあどうして、何年もこの仕事ができたのかな。
お金がいい。身も蓋もないけど、ごもっとも。
それしかできない。うーん、確かに、そうじゃないとも言いきれない。特技なんて、ないもんね。

だけど、決してそれだけではなかったと思う。もし、お金がいい、それしかできない、という2つの理由だけだったら、わたしはとっくに潰れていたはずだ。ボロボロになっていたはず。

じゃあなんなの、と聞かれるとうまく答えられない。わたしにもはっきりとは分からない。けれど、確かに何かがあった。
わたしを、そして多くの嬢を今日も風俗の世界へと駆り立てる何かが、あの街には満ちている。
今日、たまたまあの街の最寄り駅を電車で通りかかった。
毎日毎日降りて、帰りは乗っていたあの駅。
お店までは、そしてお店からはタクシーだった。ボーイさんが毎回タクシーを丁寧に停めてくれた。
今では遠い昔に感じる。
今のわたしは風俗嬢に見えるだろうか。
それともただの女性、だろうか。
それでもわたしは今日も、風俗のことを書かずにはいられない。

若かった、と言ってしまえばそこまでかもしれない。
けれど、それこそ何百年も昔の遊女の霊でも取り憑いたかのように、あの場所は魅惑で呪縛だった。
確かに誇りがあった。プライドがあった。そしてどこか、諦めに似たものもあった。

風俗嬢という職業から離れたわたしは、少し空っぽになった。
けれど今、それが心地悪いわけではない。
そして新たに、書こうという気持ちが湧いてきた。だから書くのだ。
誰の目も汚すことがないように祈りながら。

いつまで続くかも分からないこの独白を、誰かが聞いていてくれたら幸いです。


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