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ある街ある嬢
【エッセイ/詩 その他小説】

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売れるまで-1

売れるまで

我慢。それは我慢の連続である。
ああ、心と身体に悪い。
しかし最初にドカンと売れる嬢は、中盤、後半と、たるみ落ち込み気味なのも一つ確かな事実。
自分のペースで、売れたらいいね。
わたしの場合、どのお店にいても、3ヶ月〜6ヶ月は雌伏の時。(まさに雌伏だ)
その期間を我慢しなければ売れるのうの字もかすらない。
もちろん鳴り物入りで入店したことなんてないし、期待の新人!逸材!なんて謳い文句で猛烈にプッシュされたこともない。
特筆すべきルックスもスタイルも年齢でもないわたしは、まぁいいとこ中堅止まりだろう(そこまで行けたらラッキー)というような印象を関係者に与えるだろう。
ともすれば、むしろ、こいつ大丈夫か?みたいな目で見られながらおどおど入店(すみません)そしてクレームを出さないように過ごす数ヶ月が始まる。
クレームを出さないってことは当たり前のようで難しいのだ。わたしは出さないと言ったら一切出さないつもりで挑んでいた。(出る時は出ちゃうけどね)
かなりの頑張り時ってわけだ。
そうして何ヶ月か仕事をしていくと(出勤日数や時間帯も大事)だんだんと顔馴染みさんが増えていく。
そしてそして、いつの日か本指名で一日が埋まる日が来たりしちゃったりする。
そしてその状態の維持もまた大変だったりする。現状維持という言葉があるが、現状に甘んじていては維持はできないと思う。
現実の一つ上を目指す気持ちで過ごして、現状維持。もしくは、そのほんのちょっと先。
とか偉そうに語りだしてしまったけど、わたしが良嬢であったかは、甚だ謎だ。飛ぶ鳥落とす勢いなんてジェットエンジンあと4つくらい付けないとたぶん無理だったろうし、控え室でおしゃべりに興じるわたしの横を小忙しそうに走り抜ける人気嬢など山ほどいた。
つまり、人生初の入店から引退するまで、わたしはバカ売れする嬢ではなかったのだ。
それでも何とかこれで食べていけた。何年もわたしを繋ぎ止めてくれたこの業界。
何とか食べていけたどころの騒ぎではないかもしれない。世の中の給与相場(学歴、年齢からしたら)を上回るお給料をもらっていた。何の取り柄もないこのわたしがである。
しかしながら、誰でもコンスタントに稼ぎ続けることが出来るわけでも保険があるわけでもない。引退後の補償なんて、なーーんにもない。(むしろ不利ですらある)場合によっちゃ一生ものの病気や心の病を患ってしまったりもする。
安易にはおすすめできない世界だ。
なにより世間体は、最悪だ。まず大声で風俗嬢です、稼げてるからいいんです!なんて身内近所に叫んでる嬢をわたしは見たことがない。それでもわたしには魅惑だったこの世界。ああ、悲しやおかしや。

話がちょっとずれたが、売れるって、簡単じゃない。どの業界でも本当に売れてる人はほんの一握りなのかもしれない。
売れたら売れたで面白い。もっともっとってなる。けれど、それにまつわるリスクも失うものも、全て自分持ちなのだ。
そして付き纏う、この業界で売れっ子って、ねぇ・・・という視線(自己評価含む)。
わたしはバカ売れしなかったから、引き際もそれほど惜しくなかったのかもしれない。過去の栄光も、昔取った杵柄も、ありゃしない。それでも多少の心残りがなかったと言えば嘘になる。

とまぁ、売れることはかくも難しく終わりがなく、そして当たらない時は当たらない。時に戦法や主義を変えて挑む、そして変えてはならないブレない点と線も持ち合わせていなくてはならないという険しい道のり。
売れっ子の皆様、日々本当にお疲れ様です。
そして社会人の皆様(この呼び方が適切かどうかは・・・)色んな職業がありますが、その中で日々戦っている貴方。今日も頑張ってるね。
日々なにをしていても戦いなのだ。
勝者は誰が決めるのだろう。これでいいよと言ってくれる人はどこにいるのだろうか。

なんだか軸のない文章になってしまった、ごめんなさい。
けれど、風俗業界にいた頃のわたしは何故か戦うことをやめたいとは思わなかった。誰かに言わないにしろ、売れたいと密かに思う心すらあった。わたしは子供の頃から、競走するくらいなら最初から走らなくてもいいや、と思うタイプだったのに。
だけど、宣材の撮影や、個人の広告動画が出してもらえるよ、なんて時は素直に嬉しかった。それをたくさんの人に見てほしいとすら思った。
わたしにとって、不思議な世界である。そしてこんな気持ちになったのは初めてだった。
そこで思い知る、売れるということの難しさ。自分の武器を・・・なんて、武器の見つけ方も使い方も最初は分かりゃしない。
なんども悔しい思いをして(文字通り思い知って)学んだ。今だって、上手くそれが使えているかは分からない。
だからわたしは全ての売れっ子さんに、そして売れているという事実に、昔も今も敬意を表します。


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