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任侠と女たち
【調教 官能小説】

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その1-2

さきほどから男は黙って酒を飲みながら、孤独な雰囲気を楽しんでいるように見えた。
見たところ精悍な顔をした男に、マダムの美奈子は気になっていた。

たまにこのスナックに嫌な男達が来て、言いがかりをつけることがある。
そのヤクザは、どうやらこの街では古くからある郷田木組のようだ。
あまり評判は良くない。

美奈子は以前、小金を渡して済ませたことがある。
堅気には見えないが、目の前の男はそんな彼達とはどうやら違うようである。

この街も10数年前には派手にヤクザの縄張り争いがあり、
全国的に新聞沙汰になったこともあったが、
今は、その頃に比べれば目立った争いは起きていない。

しかし、聞くところによると、小さな小競り合いはたまにあるようだ。
何かにつけて、関わっているのが郷田木組である。
美奈子は気になって1人で飲んでいる男に声をかけた。

「あの、あまり見かけない方ですが、どちらから来られたのですか、もしよろしければ」
「いや、名乗るほどのものではありません、昔この町に厄介になったものですが、
少し用がありまして、久しぶりに来てしまいました」

「そうですか、ゆっくりしていってくださいね」
「ありがとう」

美奈子が見たところ、その男はこの町では見かけない人で、
派手ではないがその風貌からは、どう見ても勤め人には見えなかった。

何故かどこかで見たような気がしたが、定かではない。
少し浅黒く、男の体は鍛え上げたアスリートのように見える。

その日は、初夏で少し汗ばむような陽気だったが、なぜか長袖のシャツが気になった。
美奈子は気を利かして男に言った。

「少し暑くはありません? 冷房をいれましょうか」
「あ、いや、大丈夫です、ご心配には及びません。しかし、ママさんが暑いのならどうぞ」
男はニコリと笑ったが嫌味には見えなかった。
「そうですか、ではこのままで」
「それでけっこうです」
「はい」

美奈子は、なぜかこの男に興味を持った、男は年齢的には三十代だろうか。
数日前から夕方にふらりと来て、ただ静かに酒を飲んでいるだけである。
何を思い出したのか、ふと男は美奈子に声をかけた。

「あの、ママさん……」
「はい? 何でしょう」

美奈子は、男がどんなことを言ってくるのか気になった。

「あ、いや、この街は昔に比べるとだいぶ様子が変わりましたが……」
「あら、そうですか?」
「ええ、10年くらい前の話ですが」

「そうですね、その頃に比べたらこう言うお店は少なくなりましたね」
「ええ、私もそう思います、でも失礼ですが、客はあまりいないようですね」
「はい、今は駅向こうの繁華街の方に皆さん行かれるようです」
「なるほど、それはなかなか大変ですね」

美奈子は長い髪の毛に手を触れて寂しく笑った。
「はい、何かといろいろありましたので……」
「そうですか」
「はい」

美奈子は、何故かその男に愚痴を言いたくなった。
店のこと、不甲斐ない夫のこと、等、誰かに聞いて欲しかった。
男の眼は優しく、心から気を許せるような気がしたからだ。

しかし、男はそれ以上話すわけでもなく、黙って再び酒をちびりちびりと飲み始めた。
しかたなく美奈子は、洗ったグラスを拭いていた。

店の隅ではサラリーマン風の男達は商談の話のようである。
気になっていた若いカップルが出ていったのでほっとした様子だった。



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