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「……yes」
【初恋 恋愛小説】

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「……yes」-4

少し冷静になって自分が振られたという事実を受け止める。……簡単に受け止めきれるものでもないけど。
自分の瞳から哀しみが溢れて流れていくのがわかった。自分の涙がこんなに熱いなんて知らなかった。

俺は涙を必死に拭いながら、空を眺めた。昨日と同じ色の空を。でも昨日ではない赤い空を。

教室の扉が開く音。足音が俺に近付いてきた。
「昨日は答えてくれなかったけど……今の空はどんな顔なの?」
 俺は鼻を少しすすりあげ、幼馴染みを振り返り口を開いた。
「今の空は、今の俺の表情と一緒だよ。太陽というかけがえのない存在がどんどん遠ざかり、そして夜の闇が世界を覆い始める。喪失感と哀しみ。それだけだよ」
「翔くん、詩人だね……」
綾香はいつもと同じ笑顔で言った。ただそこに在る笑顔が、なぜだか凄く嬉しかった。
「翔くんごめんね。私が変なこと言い出さなければ……」
「そんなことないよ。振られたけど告白して良かったと思ってる。綾香には感謝してるよ」
俺はまた涙を拭った。ははは、格好悪いな。
「格好悪くなんかないよ! 私、翔くんに、告白する勇気を貰えたもん。……だから今から告白をします」
そういえば自分の事でいっぱいになっていたけど、そういう約束だったな。
「綾香は無理しないでいいよ。振られたら惨めだぞ〜」
今の俺にできる精一杯の笑顔で言った。きっとすごい情けない笑顔だろうな。

 綾香は眩しそうに顔を上げ、視線を俺に向けた。ほんのりと顔が赤いのは、夕日に照らされたせいだけじゃない……?


「今、こんなこと言うのは……」

空を眺めるのが好きだ。

「卑怯かもしれないけど」

 空は色々な顔を見せてくれる。

「わ、私は……」

 快晴という笑った顔。

「翔くんのことが……」

 曇りという不機嫌な顔。

「ずっと、ずーっと」

 雨という悲しい泣き顔。

「小さい頃から……」

俺に、 空のように色々な顔を見せてくれる存在はもう一つ在った。

「す、好きでしたっ!」

菜月綾香という幼馴染み。

「私じゃ、陽美ちゃんの代わりにならないかもしれないけど……」

肩を震わせ、目に涙を溜めて。

「私と……」

必死に想いを訴える少女。

「付き合って……ください……」

 この少女の想いに、俺はどう答えればいいのだろう?



俺は立ち上がり、真っ赤に充血した瞳で目の前の少女を見つめる。
 そしてゆっくりと口を開き声を出した。いや、出そうとした。……どれだけ声を出そうとしても、それは言葉にならなかったのだ。


 綾香、俺の答えは……。

end


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