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暑中お見舞い申し上げます
【フェチ/マニア 官能小説】

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暑中お見舞い申し上げます-4


 これなら独りきりでも寂しくないわね、と明奈は恍惚の表情で使用済みのおもちゃたちを品定めした。あれも欲しいし、これも欲しい。長く使いたいからお手入れをするためのクリーナーも必要だ。
 ひとしきり悩んだあと、明奈は一万円分の買い物をした。買うつもりはなかったのだが、片桐が紹介してくれたバイブがあまりにも気持ち良かったので、生活費を切り崩してでも欲しくなったのだ。
「お買い上げ、ありがとうございます。それにしても奥さんも好きですねえ」
 片桐がへらへら笑って言う。
「あの、また来てくれますか?」
「そうですね。日本一、いや世界一、いや宇宙一の商品を揃えていつかおじゃまさせていただきます」
「期待してます」
 オナニーで盛りのついた肉体を着衣の下に隠しつつ、明奈は大柄なセールスマンの背中を玄関から見送った。彼が振り返るたびに明奈は何度も会釈した。
 ドアを閉め、すぐさまバイブの箱を開ける。惚れ惚れするほど立派な玩具がこちらを見ているような気がした。せっかく買ったのだから使わないわけにはいかない。
「はあ……」
 もはや溜め息しか出ない。ブラジャーから乳房を放り出し、乳首をいじりながら床に四つん這いになった。脱いだショーツを足首から抜き、びしょびしょに濡れた股間をまんべんなく愛撫する。
「お願い、焦らさないで……」
 乱暴に犯されたい衝動に駆られながら壁に背中をあずけ、M字に開いた両脚の中心へバイブを導いてやる。赤らんだ肉のひだがくちゅくちゅと音を立てて糸を引いている。
「あんっ」
 膣内へ挿入した途端に地味な色の視界が薔薇色に変化した。半開きの口から舌をのぞかせ、緩い速さでバイブを中へ外へと操る。
「気持ち良い……」
 何も考えられなかった。ひたすら絶頂に向かって手を動かした。イキたい、イキたい、イキたい、イキたい……。
「やん、イっちゃう……」
 ぎゅっと目を閉じ、絶頂した。とてつもない快感の波に飲まれるような感覚。それと優しい痙攣。もっと欲しい、もっとちょうだい……。
 膣に入れっぱなしのバイブを握り直した明奈は、誰かに見せつけるようにめいっぱい開脚すると、透明な汁をぽたぽたと垂らしながら女性器の穴をほじってほじってほじくり返した。
「いく、いく、いく……」
 すると突然、玄関のドアが。
「ごめんください。チャイムを鳴らしたんですけど返事がなかっ……」
 その人物は明奈の様子を見て絶句した。視線が明奈の股間に注がれている。清潔感のある若い男性だった。
 家庭訪問の先生だ、と明奈が気付いた時にはもう遅かった。オナニーしているところを彼にばっちり見られてしまった。言い訳なんてしている場合ではない。
「あの、今日も暑いですね……」
 明奈はその姿勢のままで言った。顔が引き吊ってうまく笑えなかった。行為に集中しすぎてインターホンの音に気付かなかった上に、玄関の鍵をかけ忘れていたなんて。
「お取り込み中のようなので、僕はこれで失礼します」
 若い男性教師は目の前の光景に心を奪われながらも明奈のことを気遣い、あたふたと帰ろうとした。
 そんな彼を見た明奈がとんでもない行動に出る。
「待ってください」
「えっ?」
「帰らないでください」
 どうして呼び止めたりしたんだろう、と明奈自身がいちばん驚いていた。自分で言っておきながら自分が信じられない。
「でも、まずいですよ」
「お願いします。私の話を聞いてください」
 明奈はわざと物欲しげな表情を作り、こちら側の世界へ彼を引きずり込もうと企む。女の秘密を見られたからにはただで帰すわけにはいかない。秘密は二人で共有すべきだ。
 明奈はただセックスしたい一心で、困り果てた彼に向かって哀願した。
「私、寝取られたいんです」
 夏草の匂いを含んだ風が二人のあいだを吹き抜け、窓辺に揺れる風鈴の音を涼やかにはこんできた。


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