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エロティック・ショート・ストーリーズ
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ヌードモデル(露出、熟女)-8

        5

「みんなそろったか? じゃ、続きをやるぞ」
 なんとなくスッキリした顔をした制作メンバーたちに囲まれて、ひとり全裸の玲奈は行き場をなくした子猫のように小さくなっていた。そんな彼女の目の前に会議用の円卓が運ばれてきた。それは直径が二メートルも無いような比較的小さな物だが、作りがしっかりており、上で暴れてもびくともしそうにない。
「あ、会議に移るんだったら、私、服を着て帰るね」
 玲奈が脱衣カゴに手を伸ばそうとすると、悠也が笑いながらその手を掴んだ。
「まだですよ。これからが本番じゃないですか」
「え? だって会議用のテーブル……」
「そうですけど、他の使い道があるんです。おーい、アレ持ってきて」
 はーい、と数人の男たちの声がして運ばれてきたのは、正方形の赤いクッションマットだった。円卓に乗せると角が少しはみ出す程度の大きさで、厚みは七センチくらい。
「何するの?」
 眉を寄せる玲奈に、いつの間にか隣に並んで立っていた塚堀が答えた。
「ベッドの代わりっすよ」
 玲奈は、ワケが分からない、という顔をして悠也を見た。
「自慰をしたことはありますよね、玲奈さん」
「じ?」
「オナニーっすよ、ねえさん」
 彼の言葉の意味するところを悟った玲奈は愕然とし、唇を震わせながら質問した。
「そ、そんなシーンがあるの? あなたたちが作ろうとしているゲームに」
「ございます」
 江坂が中途半端な長髪を掻き上げた。
「人気ジャンルの一つなのであります、女神様」
 玲奈は特設リングのような赤いベッドを見つめた。
「悠也くん。この上で私に、その、お、オナニーをしろ、ってことなのね」
「そうです。してもらえますか、玲奈さん」
 彼はまったくニヤけたりしていない。真剣そのものだ。
「ゲームをよりリアルで面白い者にするためには、どうしても見たいんです。その道のプロが演技でやっているのでは無い、普通の女の人が普段通りに本気でオナニーをしている姿を」
「普段通り、って……」
 玲奈は返答に窮した。彼女は健康な女性であって、まだまだ現役の女である。いや、女盛りと言っていいだろう。三十六になった今だからこそ円熟した性欲を持っており、自慰経験も豊富だ。しかし、性欲も経験も、赤裸々に他人に語るべき事ではない。ましてや、それをして見せるなどということは、彼女にはあり得ない話だった。さきほど股間を剥き出しに晒してしまった時も、している時は悦楽を感じたが、あとで激しい羞恥にかられた。もしも見せながらオナニーなんかしたら……。見せながらオナニー?
「それ、ゲームを作るために必要なのよね」
「ええ」
「誰かの個人的な趣味ではなく?」
 ちょっとおどけて見せた玲奈に対し、悠也はニコリとも笑わない。
「もちろんです。まあ、正直に言えば個人的な趣味も満たすでしょうけど」
 進退きわまったような顔をして目を閉じ、俯く玲奈。ありえない事をして見せるしかないのか。血縁が無いとはいえ親戚である甥の見ている目の前で、適当に演技をするのではなく、本気のオナニーを。それはすなわち、この年齢になっても今も自分の奥深くでくすぶっている旺盛な性欲をさらけ出すということであり、通常ならばけして他人には見せない行為を見せてしまうという痴態を晒すことに他ならない。
 だがしかし。かわいい甥だからこそ協力すると約束し、全裸にまでなったのだ。ここまで来たら思い切って見せてしまっても……。いやいや、そんな恥知らずなことは……。
 玲奈の呼吸は乱れ始めていた。それは見せたくないという恥じらいと、見せなくてはならないという義務感の葛藤によるものか、それとも。
 ゆっくりと瞼を開き、もう一度赤いベッドに視線をやると、玲奈は全裸のままでそこによじ登った。それまで雑談をしていたメンバーたちの声が一瞬で消えた。中央に立つ。周囲を見回す。ふぅ、っとひとつ息をつき、自分の胸を見下ろして、左の乳房を右の手のひらで包み込むように掴み、ゆっくりと撫でさすり始めた。
「ん……」
 揉みしだかれていく白く豊満な乳房。悩ましげに寄せられていく眉、歪む唇。荒くなっていく呼吸音が、会議室内の吸気に染み渡っていく。
 指と指の間から乳首が顔を出した。コリっと固くなり、先端が赤味を帯びている。それをそのまま指で挟んでつまみ上げ、あいている方の手の爪先でカリっと引っ掻いた。
「んあっ……」
 華奢な首筋を反らせ肩を震わせながら、乳首への責めは続く。既に彼女の瞼は固く閉ざされ、自分の世界に没頭している。玲奈は、大勢の目に晒されながら、本気で自慰を始めたのだ。
 乳首を責めていた左手がそこを離れ、そろり、そろり、と腹を這い降りていく。見事に括れたウェストを通り、鼠径部を滑り降りて黒い翳りの中へと忍び込む。
「ぐっ……」
 茂みの中で指先が小さく蠢く度、彼女の太股はブルッと震え、膝がガクンと折れそうになる。しかし、どの部分に何をしているのか、周囲の観察者には見えない。演技ならばそんなことはあり得ない。これ見よがしに股間を剥き出しにし、はっきりと見せながら大げさに指を動かすはずだ。モデルとしてオナニーしている事は既に意識から外れ、本気でのめり込んでいる。
「はあ……、はあ……」
 大きく息が乱れ、膝がガクガクと震え出す。限界を迎えたように彼女は膝を折り、しゃがみ込んだ。そして右手を後ろについて、尻餅をつくように座った。その間、ずっと左手の指先を動かし続けたままで。


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