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エロティック・ショート・ストーリーズ
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ヌードモデル(露出、熟女)-2

        2

「こちらが今回ヌードモデルをして下さる、藍川玲奈さんだ」
 雑然とした制作室。各員の机の上は、二面並べた大型モニタとキーボード、マウスのための小さなスペースの他は、思い思いのフィギュアやガジェット、そして書類の山に埋もれ、いったいどこで仕事をするんだ、という状況である。
「みなさん、よろしくお願いします」
 きちんと挨拶する玲奈に対し、制作メンバーたちは小さな声でぼそぼそ言いながら軽い会釈を返すのみだった。しかし、玲奈に興味が無いのでも軽んじているのでもない。シャイな者が多いだけなのだ。本当はみんな興味津々だ。
「藍川、ということは、ご親戚ですか? 悠(ゆう)さん」
 プログラムリーダーの光永(みつなが)が、大きな腹を揺すり、銀縁の丸眼鏡をずり上げながら尋ねた。
「そうだよ、伯母なんだ」
「おおっと、いきないエロいっすね」
 無遠慮な視線を玲奈に投げながら、デザイナーの塚堀(つかほり)がツンツンのオレンジ頭ではしゃいだ。玲奈はちょっとだけ顔を歪め、悠也はそんな彼女に申し訳なさそうに軽く頭を下げた。
「素敵なお方ですね。まるで掃きだめに降り立った女神のように神々しい」
 サウンド担当の江坂(えさか)の大げさでよく分からない褒め言葉に、玲奈は居心地が悪そうに微笑んだ。彼は満足そうに痩せ細った胸を張り、サラリと伸ばしたセミロングヘアーを撫でる。
 部屋にはあと十人ほどのスタッフが居るが、みなソワソワするばかりで発言はしなかった。ほとんどが男だが、女の子が二人だけ混ざっていた。
「それじゃあ、さっそく会議室に移動して始めよう。よろしいですね、玲奈さん」
「あ、うん」
 玲奈の顔に緊張が走った。いよいよなのだ。このあと彼女は、夫や恋人、両親意外に見せたことの無い裸身を、今日初めて会ったばかりの若い男女の前に晒すことになる。悠也の熱意にほだされてヌードを引き受けたのはいいものの、その時が来てしまうとやはり後悔の念が胸を揺さぶる。出来ることなら今からでもキャンセルしたい思いが表れたのか、彼女の足はとても重かった。それでも会議室までの距離は無限では無い。思い切ってドアをくぐる時、思わず握りしめた拳が僅かに震えていた。
「ね、ねえ、悠也くん。更衣はどこでしたらいいかしら」
 自然と乱れてしまう呼吸を抑えながら、玲奈が尋ねると、悠也は意外そうな顔をした。
「その服じゃダメなんですか、素敵だと思いますけど」
 ダークブラウンのミモレ丈カシュクール・ワンピース。胸元がクロスするデザインと上品な浅めのドレープが特徴的だ。袖はハーフで、全体に露出は少なめ。いったんウェストで絞れた布が腰骨の所でフワッと広がり、膝と足首の中間あたりへと向かってスルリと伸びていく。そして裾の所が外跳ねするように軽く広がっている。同色のリボンベルトのアクセントも効いており、エレガントさと可憐さ、そしてしとやかな優しさが程よいバランスで共存し、三十六歳で既婚者の玲奈によく似合っている。野外であれば、白い麦わら帽子なんかがマッチしそうだ。
「え、だってヌード……」
「ああ、そうか」
 悠也は天を仰いだ。
「言ってなかったですね。依頼するのに必死で、忘れてました。服を脱いでいく過程も見せていただきたいんです」
「服を脱ぐところ、って……いったい、どんなゲームを作ろうとしてるの?」
 おや、騙して連れてきたんですか、と呟く光永を、バカ黙ってろ、と塚堀が肘で突いた。
「うーん、何というか」
 言いよどむ悠也。
「エロゲーっすよ」
 塚堀があっさり言ってしまうと、玲奈の顔はみるみるこわばり、目が泳いだ。プレイしたことは無いが、そういうものが存在することは知っているのだ。その画面に自分が映っているところを想像し、彼女はまるでAVに出演することが決まった処女のように落ち着かなくなった。
「ちょ、ちょっと、それはムリよ、悠也くん」
「大丈夫ですよ、玲奈さん自身を画面に映すワケじゃないですから。このまえお話しした通り、リアルな女性の体を知りたいだけで、玲奈さんにそういう行為をさせるわけじゃありません」
「そうかもしれないけど……」
 ヌードの状態でメンバーたちの前に出るのならまだしも、彼らの前で一枚ずつ脱いでいく過程を観察されるだなんて、恥ずかしいを超えて恐怖すら感じてしまい、動揺が収まらない。動悸がし、軽い目眩すら覚えながら、玲奈はすがるような目を悠也に向けた。
「全部脱いだ状態から始めちゃダメなの? 見られながら脱ぐなんて、恥ずかしすぎて私……」
「悠さん。嫌がってる人にムリにやらせるのはどうかと思いますよ」
 銀縁丸眼鏡を弄りながら、光永が玲奈を援護した。
「それはまあ……そうだけどな」
「何言ってんすか。脱ぐと決めてここに来たんだから、脱いでもらわないでどうするんすか」
「塚堀くん、やめたまえ」
 江坂だ。長髪を揺らして塚堀をたしなめる。
「女神が困ってらっしゃるじゃありませんか」
「じゃあ、どうしろと? 今更やめます、って言われたら困るのは、みんな同じだろ!」
 玲奈に視線が集まる。彼女はブルっとひとつ身震いをして俯いた。周囲はみんな一回りぐらい若い男女だ。その目には明らかな落胆が見て取れる。
 悠也と目が合った。祈るような顔つきで彼女を見つめている。玲奈は彼と約束をした。あなたの作るゲームの為にヌードモデルになります、と。彼の情熱に、そして彼女を『女』として必要としてくれる気持ちに応えるんじゃなかったのか。唇をキュっと結んで、玲奈は顔を上げた。


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