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キラめく光
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キラめく光-4

私は目を凝らして周りを見渡した。そびえ立つ木々の中心を走る砂利の道。その脇にある錆びれたベンチ。ここは私とキラが初めて会った場所…。
―♪♪♪♪♪♪♪♪
ジーパンのポケットにねじ込んだ携帯が鳴った。かすかに聞こえる着信音。要くんの言葉が頭に浮かぶ。
『見つけたら光の携帯に電話する』
もしかして…。私は期待して携帯に出る。
「…はい」
「キラ見つけたよっ!」
電話の向こうから明るい声の要くんの声が聞こえた。見つけた…胸につっかえていた固まりがゆっくり溶けだした。
「ほん…とに?」
「うん、本当に!!今どこにいる!?」
「どこだろう…砂利道でベンチがあって…」
「砂利道…?わかった!すぐ行くから待ってて」
電話が切れた。要くんは言葉通りすぐに現われた。腕にはキラが抱かれていて、ロックが私のところに走ってきた。
「光っ!!いたよ、キラ。ホラ…」
私の差し出した腕に、要くんはゆっくりキラを抱かせた。小刻みにキラは震えている。
「…キラ!」
私はギュウっとキラを抱き締めた。
「良かった…本当に良かった…ありがとう…」
私は要くんを見上げた。要くんは中腰になって、私とキラを見つめていた。
「私…もうダメかと…キラがいなきゃ…私…くっ…ひっく…ぅわああぁぁ…ぁぁん!」
その優しい瞳に見つめられ私は我慢出来ずに泣いた。私の泣き声が妙に聞こえると思ったら雨は小降りになっていた。要くんは私の肩に手を掻け、私が落ち着いた頃を見計らって
「光にとってキラは何だ?」
と聞いた。
「…………」
私はキラを見た。キラは私の腕に顔を埋めてまだ震えている。
「キラは…私の…」
要くんになら話してもいいと思った…。


私は中学の頃、学年でトップだった。勉強が楽しくて、今通っている進学校に入ってたくさん勉強したいと思った。先生も「光ならやっていける」って言ってくれた。だけど、そんな簡単に上手くは行かない。入学したはいいけれど、私は現実を突き付けられる。上には上がいて、トップだった私は30番前後をずっと彷徨っていた。最初はたまたまだと思っていた。だけど、どんなに勉強しても、どんなに努力しても、私の成績は変わらない。辛かった。惨めだった。生きがいがなくなった、目標が消えた、未来が見えない、そう思った。
一年生の秋、妙に静かな夜があった。何も聞こえない。急に勉強をしているのが馬鹿らしくなった。これじゃあ、生きている意味が無いって思った。気が付くと私は夜道を歩いていた。手には剃刀を握って…。宛てもなくただふらふら適当に…。そしたら、この場所に辿り着いた。このベンチの前で…私は…自分を殺そうとしていた。その時、ベンチの下からガサガサ音がして子犬が出てきた。だけど、私はさほど驚きもせず面倒だと思ってその場から離れた。なのに、その子犬はどこまでも私についてくる。どうしてこの子は諦めないんだろう。私はそっとその子犬を抱き上げてみた。小さいフワフワした毛並みがあったかくて、この子生きてるんだって思った。そしたら、自分が死のうと思ってたことなんて忘れて、夢中で家に帰り、夜中にもかかわらず父と母を叩き起こした。そして、頭を下げて頼んだ。この子を飼いたいって…。私の初めての我儘だった。夜中家を抜け出したことは怒られたけど、二人ともいいよ、って言ってくれた。素直に嬉しかった。次の日私は気付いた。この子は、
物にぶつかりすぎる。椅子の脚、壁、どれも避けれる物ばかりなのに…。階段の上り下りも出来なかった。私はすぐに医者に連れていった。
「この子は緑内障ですねぇ」
「緑内障?確かそれ…」
「そう、目が見えてません。おそらく生まれてすぐ目に怪我をしたのでしょう。捨てられたのもそれが原因だと思います」
「…そんな…ひどすぎますっ!」
「毛並みがすごくいい。きっとドッグショーに出すような犬だったと思います。だけど、怪我をしてしまったから…」
元気そうに歩き回る子犬を抱き上げた。生きているのに…物みたく扱われて…そんな些細なことで…こんなに温かいのに…。


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