投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

キラめく光
【その他 その他小説】

キラめく光の最初へ キラめく光 1 キラめく光 3 キラめく光の最後へ

キラめく光-2

「わぁっ、ごめん!これ俺の犬でロックっつって」
「キャバリアン・キングズ・コッカー・スパニエル…ですよね?」
驚いた表情のその人を私は得意げに見上げた。
「そ、そう!よく正式名称で言えるね!」
「はい、私犬大好きですから!」
私はその場にしゃがんでキラを地面に降ろし、ロックの耳の裏を撫でた。
「そうなんだ、俺と一緒じゃん!!あ、俺は犬飼 要っていうんだ」
「私は江塚 光です!」
ロックの耳を撫でるのを止めて、私は立ち上がり軽く会釈した。要くんは「よろしくね」と優しく笑ってくれた。


次の日も次の日も要くんは川原にいて、毎日いろんな話をした。
要くんは20歳の大学生。小さい頃から動物が好きで、将来は獣医になりたいらしい。そして、ロックを飼いだして3年になる。子犬の時に知り合いから貰ったそうだ。私が「犬飼だから犬飼ってるの?」と冗談で聞いたら「犬飼じゃなくても犬は特に好きだから飼ってるよ!!」と本気で熱く語っていたのはおかしかった。

私たちと比例して、キラとロックもどんどん仲良くなっていった。2匹でジャレ合っているのを、要くんと並んで見ていると心がどんどん軽くなっているような気がした。私たちの周りだけ、他と違う空気が流れていて時間がゆっくり穏やかに過ぎていく。要くんの話すこと全てに私は興味を持った。本当に毎日が楽しくて、私の夏休みは今までに無いくらい光り輝いていた。


そんな夏休みももうすぐ終わる。
「来週から学校始まっちゃう…」
「いいじゃん。高校最後なんだから楽しみなよ!」
「うん…学校に不満があるわけじゃないよ。勉強も楽しいし…」
キラが私の方に歩いてきて、ゴロンと寝転んだ。だから私は頭を撫でる。
「そういえばさ…」
要くんもキラを撫でた。
「キラはいつから緑内障なの?」
「知ってたの?」
私はすごく驚いて要くんの顔を見つめた。すると要くんは笑って
「獣医志望なめんなよ」
と言った。
「最初見た時からわかってたよ。白内障なら手術も出来るのに…」
相変わらず、キラは誰もいないところに視線を送っている。
「可哀相に…」
要くんがキラの頭に手を乗せると、キラは静かに目をつむる。ロックも撫でて欲しそうに擦り寄ってきたので、私は首の辺りをゆっくり撫でた。
「キラは私が拾ってきた時から目が見えなかった。最初は私もそう思ったけど、キラは全然苦に思ってないみたい。だから、私も同情しないことにした!キラはロックと何も変わらない…だけど…」
要くんが「うん?」と首を傾げた。
「一回でいいから目合わせてみたいな…キラと…」
要くんは寝ているキラに目を落とした。だけど、左腕が私に向かって伸びてくる。びっくりして反射的に目を閉じると、頭の上に重みを感じた。ゆっくり目を開ける。そこには、目はキラに向けられているものの、赤い顔をして私の頭をポンポン叩く、要くんがいた。

いつの間に私から離れたのだろうか。ロックがキラの鼻先で「くぅん…」と遊んで欲しそうに鳴いていた。


キラめく光の最初へ キラめく光 1 キラめく光 3 キラめく光の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前