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真夜中に呼び止める声
【痴漢/痴女 官能小説】

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通い慣れた道で-1

「はあ……今日も終電か……」

俺、角升 用蔵(かどます ようぞう)は人気のない真夜中過ぎの住宅街を歩き、自宅のアパートに向かっていた。
大学を卒業して会社に勤めること5年余り。給料が上がらない割に業務は増える一方で、ここのところも終電ギリギリで帰る日が続いていた。
夜遅くまで残業していたからと言って朝遅く出られるわけでもなく、明日は定刻通りに出社である。帰った後何時間寝られるかと思うと、気が重かった。

「…………」

しばらく歩いても相変わらず人影はなく、聞こえるのは自分の足音だけだ。まあ、この時間帯なら無理もないことだが。

「ん……?」

だがそのとき、俺は前から誰かが歩いて来るのに気付いた。やっとすれ違う人が現れたか。そのまま歩き続けて距離が縮まる。

「??……」

人影が数メートルまで近づき、夜目にも少し形が分かるようになると、俺は少し不審を抱いた。近づいてきた人はかなり背が高いが、胸は大きく膨れていて女性なのが分かる。それはいいのだが、そう寒い季節でもないのに長くて黒いコートを羽織り、マスクで顔を覆っている。

いや、別におかしくはないか。俺は思い直した。おそらく体調が悪くて体を冷やさないようにしているのだろう。こんな夜遅くに気の毒なことだ。
そして、何事もなくすれ違おうとした瞬間……

「あの、すみません……」

女性の方から、俺に声をかけてきた。鈴を転がすような声だった。俺は不意を突かれ、ドキリとして立ち止まる。

「な、何か……?」

動揺を抑えながら聞き返すと、女性は地図のようなものを差し出してきた。

「ここに行く道を教えてもらえないでしょうか? 迷ってしまって……」
「え、ええと……」

俺は地図を受け取り、その場所というのを確認しようとした。だが、暗くて良く見えない。少し先に街灯があるのでそこまで移動しようかと思ったとき、プチプチという音が聞こえた。

「ん……? うわああっ!!」
「じゃーん」

見ると、女性がコートの前を開けて大きく広げていた。
彼女はコートの下に、何も着けていなかった。真っ白い肌が目に飛び込む。特大サイズのスイカを2つぶら下げたようなオッパイがブルブル揺れ、乳首は暗い中でもはっきり分かるほど尖って勃起している。股間には黒々とした毛の森が茂っていた。そしてタトゥーだろうか。左胸には“愛”、下腹部には“女”という文字が大きく鮮やかに染め抜かれていた。

「ひいいいいぃ!!」

俺は地図を放り出し、訳も分からずに逃げ出していた。何が起きているのか良く分からなかったが、頭より先に体が動いていた。ともかく、関わり合いにならない方がいいと感じた。

「はあっ……はあっ……」

どれほど走っただろうか。息切れがして立ち止まり、後を振り返ると女性は追って来てはいなかった。ほっと一息つく。

「あれが、露出狂の痴女ってやつか……」

官能小説かエロ漫画でしかお目にかからないと思っていた存在がリアルに出現し、どうやらパニックに陥ってしまっていたらしい。何度か深呼吸を繰り返し、気を落ち着けて再び歩き出す。

「見なかったことにしよう……」

俺は自分に言い聞かせ、家路を急いだ。多少驚きはしたものの、実害はなかったのだ。気にする必要はない。それよりも、早くアパートに戻って休みたかった。わずかな距離とはいえ、残業続きの疲弊した体に全力疾走はこたえた。

その後ようやく帰宅した俺は、服を脱ぐのが精一杯であるほど消耗していた。敷きっぱなしだった布団に倒れ込むのと、意識が無くなるのはほぼ同時だった。


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