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英雄ハンスの娘
【レイプ 官能小説】

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撃てないソフィア-2

 扉の奥で何かが跳ね上がり、その後の炸裂音とともに216個の鉄球がばら撒かれた。
 皮肉にもその跳躍地雷はハンスの生まれ育ったスーザニアの軍事工場で作られ、ノルトフォン連邦防衛に配置されたものだったのである。
「くそったれ……民家にこんなトラップ仕掛けるなんて、ソフィーの家族だか、誰だか知らないが……イカレてるぜ、この戦争は!」
 扉越しとはいえ、対人地雷の鉄球を数発喰らったハンスは血まみれになり、その場にうずくまってしまっていた。
「ハンス、あ、あんたどうしたの」
 炸裂音を聞いて、少女が彼の元に駆けつけてきたのだ、
「ソ、ソフィア、なぜ車から出てくる、この家は危険だ、多分地雷だらけにされてる、チクショウくそ痛ぇ……」
 自分の子供を巻き添えにしても他民族がにくいセレニナ人家族だったのだろうか、サルドニア人とスーザニア人を憎むセレニナ人なら有りうることだ、略奪に来る民族を殺すためだった民家に地雷を仕掛けるくらい朝飯前なんだ、どの民族だってやっていること、これで……これでソフィアも思い知ったことだろうさ、この子の帰るところなんて、もうどこにもないんだ。
「酷い怪我……可哀想なハンス、動けそう?」
 しゃがんで膝をつき、ハンスのハンサムな顔をそっとなで、顔から肩、肩から腕、腕からピストルを握る手に、その手を優しくほどき、鋼鉄の殺人機械をとりあげた、ああなんて目をしているんだ、あどけない顔に目を極限まで開かせて、瞳孔が広がりきって、残忍さとあどけなさのグラデーションががとても素敵だよソフィー、こんな僕に微塵でも可哀想なんて思ってくれているのだとしたら、君は何ていい子なんだろう、それでも君のパパママを殺した憎きスーザニア人H・ミクローシュを撃つチャンスだよ、君はソフィーは一瞬でも気を許した小児性愛者を撃ち殺す殺人者になるんだ、死ぬまで僕のことを忘れられなくしてしまえるのなら僕が死ぬことにこれ以上の意味は無いじゃないか、僕の死は君の心の傷として永遠に刻まれるんだ焼印のように永遠に、消せないよどうせ消せっこないのさ、だって引き金を引いたのはソフィーなんだろ? なんだよその過去形はっていう、だけどもその震える細い腕は撃たざらないだろ、さあ撃てよソフィア。
「小学校の林間学校(コロニー)で軍事訓練は受けているだろう? 小銃が扱えれば、拳銃の使い方くらい、わ、わかるよな」
 東のS連邦との摩擦が高まったため、全市民防衛というとても変わった、ユニーク過ぎるノルトフォンドクトリン。戦闘民族と呼ばれるスーザニア人が考案し、ノルトフォン憲法にも謳われ、少年少女であろうと武器を持って戦う『権利』を認め、戦う『義務』を何人たりとも奪うことを許さないという徹底した思想がこの国を守ってきたのだが、そのために市民全員が武器を扱いに慣れ、自治体にそれぞれ兵器が与えられたせいで、一度内戦に入ってしまうと、歯止めが利かなくなってしまうのだ。
 凄惨な貌なのに、カチカチ、カチカチと歯を鳴らす音がハンスの耳にも聞こえていた、カチカチ、カチカチと、仰向けになった男に跨りその目を凝視する少女は、その目にやがて大粒の涙を溜め込み、とても悲しそうに、その光る雨粒を体の振るえとともに一気にあふれ出させた。
 拳銃も震え、照星も定まらない、よせよどうせなら楽に逝かせてもらいたい。


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