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俺は他人棒
【熟女/人妻 官能小説】

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不破乃里子(32)-15

「あのね……ほんとは少し盛ったの」
「は?」
 分厚く札束で膨れた封筒を膝の上で玩び、乃里子が口にした言葉。
 俺にはその意味がよく掴めなかった。
「だから……あのとき。寿くんにエッチの最中、尋問されてるとき……」
「借金の額?」
「そう……何でなのかな、悲劇のヒロインっぽさみたいなの、強調したい気持ちもあったかもしれないんだけど。ほんとは残りの額、二百四十万円くらいなのに、水増しして伝えちゃった」
 心底から申し訳なさそうに言う乃里子。
 約束通り金を渡すと連絡して、乃里子宅に程近いショッピングモールで会った。
 高額キャッシュの受け渡しとあって、立駐に停めた車内できっちりドアロックもかけた状態。
 アクション映画の闇取引シーンみたいな気分──。
 もっとも、売春の精算と捉えてしまえばこれも立派な闇取引だが。
 嘘でかさ増しした分は六十万円ほど。
 返ってくるならばデカい額である。しかし、
「一旦渡したもんだから、返品は受け付けないよ。乃里子さんの取り分として、役に立ててくれればいい」
 ポッキリ三百万、乃里子に進呈する気でいたのだ。一度決めたことを後から動かすのは好きじゃない。
「そんな、ダメだよ……」
 潤んだ瞳で見つめてくる乃里子。
 真剣な眼差しを受けていながら不謹慎だが、俺はムラッとした。
「なら、こうしよっか。乃里子さんは二度と適当な男に自分を安売りしないこと。しばらくは俺にそのエロい身体を独占させる……ってのはどう?」
「……またエッチしてくれるってこと?」
 先夜の陶酔が蘇ったのか、湿っぽかった乃里子の表情に艶が戻った。
「何か、それじゃ実質六十万で乃里子さんの身体買い切ったみたいだな。それこそ安売りしたことになっちまうか。こんなエロい肉体、値段なんかつけるの勿体ないよ」
 舌なめずりして、俺は乃里子のバストを撫でた。
「あんっ……」
 衣服越しでも抜群の感度。
 たちまち雌の顔になった乃里子は、悪戯っぽく挑発的な笑みを浮かべ、
「それじゃ、一回ごとに三百万加算しちゃおっかな」
 軽口を叩いた。
「おいおい! それ確実に破産だから。ヤるたび乃里子さんに返しきれない借金することになるって」
「いいよぉ〜。亮介くんの身体で返してくれれば。ただし一回ヤるごとにまた借金カウントってことで」
「何だそりゃ! 永久機関並みの終わらない連鎖!?」
 二人してゲラゲラ笑い合えるオチが着いた。

 結局、ヤリ放題セフレがまた一人増えたという決着だった。
 その後、乃里子はダメ亭主を突き放して離婚に踏み切った。気の優しい女だから、踏ん切るには相当な葛藤もしただろう。
 もう少し自分の好きなように生きればいいと、懐はたいて送った俺のエールは、無駄にならなければいいが──。
 柄にもない仏心を出してしまった気恥ずかしさを覆い隠すべく、俺はいつもの変態ヤリチンモードにスイッチを切り替え、乃里子とラブホへ向かった。



 〜了〜


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