【花よりも花の如く】-7
「怖い……」
あたしの口から、言葉が零れた。多分、本心。行為自体は馴れてしまったとは言え、やっぱり怖い。
お兄ちゃん以外の人とヤったことないもの。
ううん。そーじゃなくて、……あたしの好きな人は先輩だけど、確かに先輩は好きなんだけど。
このまま抱かれているのも、先輩の腕の中ってとっても気持ちいいんだけど。
でも、怖い。いつもの先輩じゃないのが、怖い。あたしの知らない先輩の姿が、怖い。
先輩はあたしの呟きに、微かに笑った。首筋にかかる息がくすぐったい。
「可愛いな、愛花は」
苦笑を含んだその言葉に、肩越しに先輩の顔を見上げると、少し垂れ気味の目が優しく微笑んでいた。
あ、この顔は知ってる。美術室の裏に住み着いてる野良にゃんこの頭を、くしゃくしゃってする時の顔。
あたしの好きな先輩の顔。
手を伸ばすと、その頬に触れてみる。
細い頬。いつも見上げていて、一度触れてみたいと思っていた先輩の頬。
あたしの指が触れても、先輩は優しい微笑みを崩さなかった。
怖くない？この先輩は、あたしの知ってるいつもの先輩なのかしら？あたしの好きな先輩なのかしら？
「あっ、先輩……」
先輩の唇が、あたしの唇を塞いだ。さっきの口づけとは全然違う、深くあたしの口の中を食べ尽くしそうな勢いの口づけ。
こんなことされたら、体の奥底のスイッチが入っちゃうってくらいの、熱く滾った、濃厚なキス。
薄暗い部屋の中に、あたし達の縺れ合う唇が立てる濡れた音が響く。
凄い、先輩の舌の感じ。キスだけでイっちゃいそう。それに、お兄ちゃんの舌と全然違う。
先輩のは、少しざらついてて、ちょっと煙草臭い。
「あっ……」
不自然な体勢でキスをされたままで、先輩の手が太股を滑り、あたしのスカートの中へと忍び込んできた。
良いか？とか、駄目か？とか、そんなの聞いてくれなかった。
聞くまでもないと思ったのかしら、だって、あたし、既に凄く濡れていたから。
「恥ずかしい」
あたしがそう呟いたら、先輩がふっと笑った。それはどういう意味の笑いなのかしら。
なんだかお兄ちゃんの笑みと同じような感じ。凄く、いやらしい……。
「あっ、先輩」
擦られるだけで、くちゅくちゅと恥ずかしいくらい音を立てるパンツの上を撫で回していた先輩の指が、パンツの縁から中へと忍び込んできた。
先輩の硬くて大きな指先が、あたしの茂みを掻き分け、小さな突起に触れる。
あたしの突起は、自分でもビックリするくらいに硬くしこっていて、先輩の指が触れた途端、イっちゃいそうな感覚に体が崩れ落ちそうになった。
「お前、初めてじゃないんだな」
そんなあたしの様子で分かったのかしら。先輩の声が背中に聞こえる。
恥ずかしい。そんなの答えられる訳ないじゃない。
聞かれる訳無いとは思うけど、相手は誰だ？とか聞かれたら、なんて答えていいのか分からない。
だって、……お兄ちゃんだなんて言えないじゃない。
ドキドキする。
先輩の手、お兄ちゃんとは全然違う。
お兄ちゃんも指が長くて大きな手だけど、先輩の指は、お兄ちゃんよりも大きくて硬くて、触られた感じが全然……あっ、あたし、なに比べてるのかしら？先輩とお兄ちゃんを比べるなんて。あたしの好きな人は先輩なのに。
先輩はお兄ちゃんとなんか比べものにならないくらい格好良くて、優しくて頼りがいがあって、
先輩の方が二つ年下だけど、お兄ちゃんよりも全然大人なんだから。
先輩はあたしのソコに指を浸したまま、もう片方の手であたしの制服のボタンを外した。
胸のリボンを解き、シャツのボタンも外していく。
そして、シャツをスカートの中から引きずり出し、パステルピンクのブラを押し下げて、カップの中からあたしの乳房を晒け出した。
恥ずかしい。
俯くと、先輩の手があたしの胸を包み込むようにしてゆっくりと揉んでいるのが見える。
先輩の掌の温もりが、じんじんと痺れてあたしの奥底にまで伝わってくる。
そこから与えられる触感と、自分の胸が揉まれているのを目の当たりにしている視感とで、頭の中がクラクラする程気持ちいい。
先輩の指が、あたしの乳首を摘んだ。
「あっ……」
あたしの口から感極まった声が漏れる。なんていやらしい声。
掌を押し付けるようにして揉みしだき、コリコリと乳首を弄られるあたしは、きっと凄くいやらしい顔してるんだわ。
「はぁ……先輩、……駄目ぇ……」
仰け反るように先輩に背中を預けてしまう。先輩の指、なんて官能的なのかしら。
「こっち来て」
先輩があたしを抱き竦めたまま、引きずるようにして移動した。