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人形たちの話
【教師 官能小説】

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人形が人間だったころの話。-1

 一目惚れの存在を、私はそれまで信じていなかった。
 恋愛ごとには疎かったし、正直勉強や武道の方が性に合っていると思っていたから。
 はたから見れば、親や教師の言うことをよく聞くいい子ちゃん。真面目な人形でしかなかったと思う。
 それは教師になってからも変わりなくて、元々教師としての情熱はなかったから、成績だけを重視して授業を行っていた。だから余計に自分はどこか人形のようだと、そう思えた。お付き合いする男性もいるにはいたけど、長続きしなかったのは、自分のそういう欠落した部分が透けて見えたからだと思う。
 それらがすべて覆されたのは、深町光と出会った時。
 担任教師として教壇に立った時、彼の名前通り、私には光って見えた。
 その透徹とした眼差しも、中性的な容貌も、はにかむような笑顔も、とても内気だけど芯の強い純粋さも、すべてが愛おしく感じられた。
 それが、彼が入学してきた時、感じた全て。
 私の世界は彼によって塗り替えられた。
 だけど勿論、教壇と彼の机は、とても近くて、とても遠くて。
 もどかしさはいつしか絶望に変わっていた。
 彼はいつからか、あからさまに私を避けるようになっていた。多分、大人たちに絶望していたんだと思う。だって誰も彼を助けてくれない。
 初めて教師として問題に向き合った。私なりにいじめ問題の勉強もして、わかったことは、いじめ問題は加害者を叱ればどうにかなる問題ではないという現実だった。



 ある日、体育用具室に入っていく彼を見つけた。多分一人で昼ごはんを食べるんだろう。
 深町君にとって一人の時間は、唯一の安らぎだったのかもしれない。
 私の行動はそれを奪ってしまうのかもしれない。深く人と付き合ったことのない私には、それがわからない。
 深町君からの拒絶が一番怖かった。こんな気持ちは初めてだった。


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