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人形たちの話
【教師 官能小説】

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人形が人形でない話-4



 放課後の美術室。学校では唯一安らぐ場所だった。絵を描くことが好きな僕は、いつしか美大に行きたいと願うようになった。まだ誰にも言ってない願いだけど、それだけが僕の希望だった。
 美術室の内側からカギをかける。これで聖域には誰も入ってこられない。
「ふう」
 身体の痛みは無視できるようになっていた。美術室に隠してあるスケッチブックを取り出して、僕はヴィーナス像をデッサンする。ある日はりんごの置物だったしまたある日は美術室から見える風景だったりしたけど、やることは同じ。ひたすらデッサンを繰り返す。それだけが僕の癒しだった。なのに。
「深町君」
「せ、先生!?」
 なんで僕の聖域に、先生がいるんだ!?
 放課後の美術室はこの進学校では形骸化している。誰にも知られていない、僕と同じ打ち捨てられた場所だったのに。
「す、すみません!! すぐ、帰りますから、あの、その」
「絵、描いてるんだ?」
 僕の狼狽を先生は都合よく無視する。いつもの微笑を浮かべて、先生は僕のスケッチブックを覗いた。
「凄い、上手ね」
 声に感嘆が混じっている。お世辞ではなく本気で言っている。それがわかって、「は、はい」僕は頷くしか出来なくなってた。
「ねえ、もっと見せて」
「ど、どうぞ」
「…………」
 しばらく無言の時間が続いた。永遠にも思えた。
「本当に上手ね。見入っちゃった」
 先生は楽しそうに笑いながら、僕にその笑顔を向けた。
「これからも、見に来ていい?」
「は」
 僕は、やっと自分を見てもらえたような気がして。
「はい」
 泣きながら、頷いた。
 先生はそんな僕の頭を撫でて、いつまでも付き合ってくれた。





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