民族浄化-2
「やあ気分はどうだい、気持ちは変わってくれたかいソフィア」
「……お母さんとお父さんのところに返してください」
ソフィアと呼ばれた少女にいた村は、スーザニアの猛攻撃に曝され、生き残った兵隊はその地で民間人の男ともども処刑、犠牲者は８０００人とされ、女子供は捕虜となり、各収容所に列車で輸送された、この作戦名は後に『大嵐作戦』と呼ばれ、スーザニアは勝利に沸きかえった。
おそらくソフィアの父親は生きてはいまい、母親とて生きているのかも不明、生き延びていたとしても、今この少女のようにまさにレイプされかかっているはずだし、生き地獄を味わっているものと思われる。
「わかってくれないかな、もう君は故郷へは帰れないんだ、それにここでの暮らしだって、他の皆から比べたら遥かにましなはずだ」
公式に１００人以上を射殺してきた英雄ハンスだからこそ、この少女には特別な待遇をあたえられ、囚人房というより、一般家庭ともいうべき部屋を彼女に提供できているのだ、もっとも軟禁状態ではあるが。
「学校に行きたい、友達にも会いたい、ここから出してください……」
怒り顔だった貌は続かず、大粒の泪を流しさめざめと泣いている、か弱い少女そのものだ、ずるい、女の涙はずるいと、そうハンスは感じている。
「泣いたからといって許されるのはもうお終いだ、ここは戦場、女の涙で許される場所ではないんだよソフィア、さあこっちへ、僕を信じて」
出来ればロマンチックにムードを盛り上げたい彼ではあるが、そんなことは不可能だということもわかっている、少女と相思相愛などなれる関係性ではないのだ、せめて優しく華と散らしてあげることしか出来ないのだ。
「嫌、くそったれのスーザニア人め、永遠に呪われろ、ここから逃げ出したら、セレニナ解放戦線に入って貴様たちを殺してやるから、たとえそうならなくても、あたしたちの子供がいつかあなた達のことを殺す、私を犯すつもりならそのつもりでいなさい」
１２歳の少女とは思えないほどの闊達な口だとハンスも驚いた、さすが母親になる資格がある少女だと、もっともそれを変えさせるための施設なのに、どこまでこの女の子は抵抗する気があるのか、より興味が彼のなかから湧き出てきた。
「……そうか、そうだよな……余計な情けは無用、銃口がソフィアに命令する、服を脱げ」
所詮は対等な関係ではない、この関係は酷く暴力的で、ほとんど一方的な関係で、人と人はどこか依存しあっているとはいえ、銃による脅迫でしかない。
黒光りする鋼鉄の武器、人を殺める殺人機械の照準を通し、彼はハンスは幼い少女のその美しい顔に、その表情にみとれていた、強気だった貌から、諦め受け入れるという表情の変化に、屈辱をいけいれるときのような、無表情というより弛緩したような、力みのぬけた顔に変わるのを見た、拳銃の安全装置はオンの状態で、彼女を撃つ意思など更々無いハンスだった、徹底的に反抗し、彼に撃たれるという選択肢だってあったはずなのに、ソフィアはそうはしなかったのだ、さっきまであんなに強気の女の子だったのに、とハンスは少し残念に思う、この美少女と少しだけ距離が縮められたように思う。
『レイプから始まる恋もある』
そんなことなどあるはずは無いが、厳密に証明できるわけではない、そう言い訳するハンスである。
無表情の弛緩した少女は、そこから怯えたウサギのような顔になり、まだ泣き足りないのか目尻に泪を溜め込み、そうしてカーディガンから脱ぎ始める。
「体が震えているね」
怖いのだろう、そりゃそうだ、これから目の前の僕に犯されるのだから、逃げ場なんてないんだ、銃で脅されるなんてこれから何されるのかも分からない、底なしの恐怖を受け入れなければならない絶望感なんだろう、いっそ偽善として逃がしてしまおうか、そう一瞬頭をよぎるハンスだが、そんなことをすれば逆に彼が裏切り者呼ばわりされて、軍に処罰されないとも限らないし、この戦時下、この少女の逃げる場所などどこにも無いのだ、どうせまた捕まり、もっともっと酷い目にあうかもしれない……つまりこの娘を守る為に、決して悪いことばかりのことじゃないはず、小児性愛の僕にしか出来ない、彼女の可愛がり方をしよう、そうおもうとハンスは興奮してきていた。
「下もだ、下も脱いでくれ」
「い……いや」
時間はいくらでもある、銃口を眉間にコツリッと当て顎で軽くしゃくってやるだけでも効果抜群だ、死ぬかもしれないという恐怖ととりあえず命令を受け入れるかの二択でしかないのだ、じっくり選ばせてやればいい。
引き攣った表情すら可愛い、このまましばらく黙っていてほしいとハンスは思う、好みの、ドストライクの年齢、そして美しい幼い容姿、脱いだらどんな肢体をみせてくれるだろうか、彼の期待が高まる。