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よだかの星に微笑みを(第三部)
【SF 官能小説】

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ナースチャ-1

実家に帰って早々に、就職活動をやる羽目になった。決まっていないといった途端、父親が伝手を辿っていろいろな会社に連絡してしまったのだ。こうなると、父親の面子もあって、断れない。甚だありがた迷惑に感じたものだ。
自動車教習所に染物屋、学習塾、大手の自動車業界系企業と、バラエティーに富んだ無作為な面接を受ける羽目になった。暑い夏にスーツで歩き回るのは、自虐的な習慣ではないだろうか。外づらを気にする俺は、それでも真面目に受け答えのシミュレーションを欠かさず、学習塾と教習所には忽ち合格した。
後はどう断り、更にそこからどうするのかだ。卒論だってやらねばならない。
ナースチャは、可愛いことと、日本語に困らないこと、そしてうちに女の子がいない事から、父にも母にも溺愛された。俺が会社回りや図書館通いをするあいだ、買い物へ連れていかれたり、遊園地に行ったり、服やら靴やらおもちゃやらを買ってもらって、本人もご満悦なら、ナースチャに「お父さん」「お母さん」と呼ばれる俺の両親も実に満足そうであった。俺までいつのまにか「お兄ちゃん」になっていた。
ナースチャは言った。
「あたし、お兄ちゃんの家の子になりたい。」
本気らしかった。
ロシアにも家族は居ないのだそうだ。うっかり実家へ連れてきてしまったが、現在、ナースチャの学校や戸籍がどうなっているのか、俺は知らなかった。不法滞在扱いになる可能性もある。それに、生きていると分かれば、生類解放戦線から狙われる危険もない訳ではない。
「ああ、その辺は適当に処理しておくよ。どうせ居場所が無い子だ。預かってくれるなら助かる。」
高橋先輩の一言で終わった。
俺の両親は、三割がた作り話の、しかし七割は事実らしいナースチャの成育歴に心を打たれ、養子の手続きに踏み切った。
「本当に変態兄妹になるぞ。」
「そんな事、しないもん。お兄ちゃんにはポリアンナちゃんがいるでしょ。あと、あたし、ここから学校に通う。お父さんとお母さんと暮らす。」
「まあ、手続きしちゃったから、いいけどさ。なんか、人生、変わってきた。就職活動どころの騒ぎじゃ、本来ない気がするんだが。」
「卒業したら、どうするの?」
「それは言わないように。そこは自分で考えないと仕方ない点、人生、変わってないな。」


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