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よだかの星に微笑みを(第三部)
【SF 官能小説】

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新型集合-2

一時間もしたら、ナースチャが目を覚ました。無言の無表情だった。
「飲みに行くから、付いてきな。ご飯はそこで食べればいいよ。」
「あそこが痛い。」
 それだけ呟いた。
飲み屋に子供を連れて行くのもどうかと思うが、そういう家族連れはいる。黙ったままのナースチャを連れ、俺たちは出かけた。
今日の集まりは、俺とアンカと蘭なのだった。思えば、最悪の取り合わせである。
「じゃ、乾杯!」
ナースチャは、喉が渇いたと言って、レモンジュースをがぶがぶ飲んだ。焼き鳥も遠慮なく食べた。
「そんなに食べて。妊娠したんじゃないの?」
蘭が普段の調子でさり気なく呟いた。嫌味だと取ったナースチャは
「あたし、まだ生理ない!」
「ようやく喋った。」
俺が指摘すると、ナースチャはまた黙った。
「今、あたしたち、誰も組織の人間じゃないんだよ。喧嘩する意味、ないよ。」
アンカが年上らしい説教調で言った。ナースチャは反応せずに
「ジュース、おかわり。」
「すいませーん!」
「はーい!」
俺が呼ぶと、すぐ店員の声がした。中年に差し掛かろうとする痩せたお馴染みの人だ。他からも声が掛かるので、こっちになかなか来られない。仕方なく俺が注文を大声でしたら、遠くから復唱して応えた。
「はーい。三番さん、ジュース一丁、鶏皮三丁、餃子二丁、焼きそば二丁。七番さん、アタリメ一丁、生中二丁、手羽先三丁。十二番さん、梅サワー一丁、ハイボール二丁、追加!」
ナースチャが目を丸くして驚いた。
「何、あの人。あんなの覚えられるの? 書いてないよ。」
「プロなんだろ。俺は出来るようになるか自信ないけど。」
「何ができるようになるか、自分じゃ分かんない事もあるよ。あたし最近、人間って凄いなって感じる。」
蘭が泣き出した。何やら語り出した事の要は、渡部が優しすぎるという惚気(のろけ)だった。
「でも、センセー、合宿行っちゃったから、今晩は弘前君ちに泊まる。」
「それ、明日からずっとって事だよね。まあ、いいけど。俺も帰ろうか悩んでる。」
アンカが
「少しだけ帰ってきたら? あたしなんか、ルーマニアに戻れないんだよ。ご両親に顔、見せてきなよ。」
「ナースチャも行ってきな。」
蘭が言った。
「え?」
俺とナースチャは顔を見合わせた。蘭は続けて
「あたし達と一緒にいる気、ある?」
ナースチャは
「行くとこ無いから、そうする。どうせ、もうお兄さんには勝てないし。」
「敵でもなんでもなくなったから、本物のお兄ちゃんになってやりなよ。」
アンカはワインを飲み干し、軽くそう言った。
「変態兄妹の出来上がり。うふふ。」
蘭が笑って言ったが、俺は笑えない。
「でも、ナースチャからしたら、動物への気持ちを何とかしたいだろうな。組織なしじゃ、活動は難しいか。」
俺がふと口にした言葉にナースチャは
「あたしのことなんか、なんで考えてくれるの?」
「気にはなるさ。」
「あたしも、あんたの行動、理解はできる。共感しないけどね。」
アンカが言った。蘭は
「あたしは結構共感する。でも、もう、やり方は変えちゃう。人って、簡単に判断できないこと、分かったから。」
「蘭は男性が憎かったのよね。」
「子供の時から犯されてたもん。女にもされたんだけど。」
「玉を握り潰した事もあるんでしょ?」
「敵のを、っていうのは、弘前君らの組織のだけど、何人か素手でやった事ある。」
「気持ち悪くなってきた。」
俺が言うと蘭はまた泣き始め
「ほんとはやりたくなかったもん、あんな事。」
ナースチャは焼き鳥を独占しながら
「玉って固いの? どんな大きさ? 潰れたらどうなるの?」
元気が出てきたようだ。俺は
「玉の話はやめてくれ。」
「そうね。じゃ、女の話しようか。あたしは女のは嫌い。」
アンカはボトルをまた頼んでから言った。蘭は
「あたしは好きだな。神秘的じゃない?」
 アンカがナースチャに
「弘前君は女のお尻の穴も大好きなの。女の出すものならなんだって好物なの。」
 蘭が加えて
「中まで触ったり舐めたりするもんね。」
「舐める? 臭くないの?」
「臭いに決まってるでしょ。でも、男子はそれが好きなの。」
ナースチャは
「小学生も男子は女子のパンツ見たがるもんね。そう言えば、お兄さん、あたしのパンツどこにやった?」
始終、黙っている俺を見たアンカが
「話、変えよ。女子がこういう話すると男子はだめなんだよ。」
 そのだめ押しにナースチャが
「お兄さん、まさか穿いてないよね? 別にあげてもいいんだけど。」
「穿いてないって。それよりナースチャ、焼き鳥ひとりで食うなよな。生類解放戦線がそれでいいのかよ。」
俺が指摘したら
「死んでたら食べてあげなきゃ可哀想じゃないの。もう一皿頼もうよ。」
「俺も同じ考えだけど、人が言うと、どうも詭弁のような気がする。」
こうして俺たちは打ち解けていった。つくづく、飲み屋はいい場所だと思った。


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