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純白のマリアと漆黒のまりあ
【ファンタジー 官能小説】

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孤独な少女-1

 真新しい制服に身を包み、首元の赤いリボンを結ぶ。
 鏡の前でくるりと回ってセミロングの黒髪を風に流すと私は小さく頷いた。

「少し早い気もするけど、初日から遅刻したら変に目立っちゃうもんね」

 時計を見るとまだ七時。
 普通に考えれば早すぎる。しかし、極力目立たないように生きてきた彼女にとって、可もなく不可もなく中間で生息しているのが一番無難だという結論にこの年齢でたどり着いた。

「行ってきます」

 返事のない一軒家にひとりでいるのには慣れている。お弁当を作ることも別に楽しくはないけれど苦ではない。
 ただ、あの学園には誰でも安く頂けるカフェがあるというので一人暮らしのまりあが利用しない手はなかった。

「モーニングもやってるってパンフレットに書いてあったよね」

(今日はもう朝ご飯すませちゃったから明日行ってみよう)

 静かに家を出たまりあ。徒歩で行ける場所なので軽く見積もって20分もあれば十分のはずだが――

「学校で絵の描ける場所あるかな?」

 もうひとつ早く出かけたいのには意味がある。まるで神殿のような造りになっている学園の敷地内をくまなく探索してみたいというのが本音だ。そして絵を描くのが好きなまりあは、愛用のスケッチブックを専用の鞄にしまうと急ぎ足で表通りへと向かう。思っていた通り、小さい頃から憧れてたびたび覗いていた"楽園"に続く道に新しい発見はなかった。

 いつもと違うのは黒く艶やかな鴉(からす)が一羽。まるで猫がそこでうたた寝をするように塀の上で船を漕いでいたくらいだ。もうコソコソ様子を探る必要はない。

 だって私はここの学園の生徒なのだから。

 朝日を背に輝く"楽園"はまるで神様に後光が差すようでとても美しい。神聖な気持ちで巨大な門をくぐる。

「この香りって……」

 風にのって流れてくる優しい花の香りにあたりを見回す。
 まるで導かれるように香りの出所を探していると――

「百合の園?」

 一面に咲き誇る真っ白な百合たちがまりあを歓迎するように穏やかに揺れていた。

「ちゃんと道がある……」

 少し歩いていくと水の流れる音が聞こえてくる。
 ようやく見えたそこは四方を噴水に囲まれ、まるでガーデンテラスのようになっている中央には洋風な丸いテーブルと椅子が五脚並べられていた。

「生徒会の秘密の打ち合わせ場所とかかな?」



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