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よだかの星に微笑みを(第三部)
【SF 官能小説】

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鉢合わせ-3

「あたし、もう大学もどうでもいいんだ。居ると却って危ないかもしれないし。寮も退寮しちゃった。」
「住むとこ見つかるまでうちにいる訳ね。」
「家事とかするよ。ルーマニアだと女がするの普通だし。夜も欲求不満にならないで済むじゃん。」
「そこは反論ないけど、ポリアンナのこと思うと微妙に罪悪感ある。」
俺とアンカはうちで飲み直していた。もう裸だった。アンカの体臭が部屋に籠って俺は気分が良かった。
「このワインね、作ったの、ビオディナミっていう農法なんだって。おいしいよね。」
ラベルを見ながら俺につぐアンカに
「五分の一くらいの値段で、普通のワイン、一本買えたけど。まあ、味はさすがに違うな。飲み屋に行く前に最初からこれ飲んでればもっと良かった。」
「ビオディナミって、何とかって言う思想があって、その一分野なんだって。」
「食べ物なら、マクロビオティックって、バイト先で聞いたことあるな。そんな感じかな。」
「人を動かすのはやっぱり思想だよね。あたしは、何にも無いな。組織に入ったのも家族のためだし。」
「俺も何にも無い。でも、改造人間になってから、少し考えてる。思想は自分の外にあるんじゃ駄目なんだ。自分が思想そのものになるっていうか、心から出てくるものにならないと。」
「でも、あたしは今、思想より弘前君とか、渡部君とか、みんなが大切なんだ。蘭もね。」
「うん。分かるよ。でも、自分が何かでありたいし、何かをしたいとも思う。」
「弘前君がそんなこと言うの、珍しい。」
「ここに、もたれ掛かってくれる?」
俺は裸のアンカを、後ろ向きに、自分の胸へ寄りかからせた。濃い女のにおいが立ち昇ってくる。硬い小ぶりの乳房を摑んでみた。
「俺たち、離れられそうもないね。」
「そんな事、分かんないけど、一つになろうよ。」
俺たちは静かに腰を重ね合わせた。


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