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よだかの星に微笑みを(第三部)
【SF 官能小説】

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鉢合わせ-2

「ヒロヤ君は、電子工学専攻にする気なんだろ? やっぱり唯物論者なの?」
俺は確かめてみたかった。ヒロヤは
「そうですね、信仰は一応あるんですが、普段は唯物論的ですね。キリスト教徒なんかも、日曜日だけ神様を信じてるみたいな人、多いらしいです。現代はそういうのが普通なんじゃないでしょうか。」
「人は死んだら何も無くなると思う?」
「思わないんですけど、居なくはなりますから、例えば死刑制度には賛成です。」
渡部が
「おお、今日の話のネタになりそうやんけ。」
俺は
「ペットの殺処分はどう思う?」
ヒロヤは
「あれは全然、死刑と違いますよ。スターリンの粛清みたいなものです。反対です。」
渡部が
「弘前、お前、後輩に尋問みたいな事せんで、まず自分の考えを述べい。」
「俺ももう殺処分には反対だし、動物実験にも反対だ。」
焼き鳥を食いながら伊月が先に言った。
「俺は、人も動物も殺すのには全部反対だけど、殺されたり死んだりした肉は食うぞ。自然のバランスとか考えないで、惻隠の情で助ける。」
俺はそう言った。渡部がすかさず
「な、岡田君、こいつ非論理的な奴なんや。孕むかどうか考えずに、小学生でも女ならセックスする、言う考えや。刹那的やろ。」
「酷い言われようだな。」
俺は好きな揚げ出し豆腐を、人に食われる前に半分ほど取り皿へ持っていった。ヒロヤは
「僕は、女性とはきちんとお付き合いしたいと思います。」
「今度は渡部、お前が標的になるな。」
伊月が言った。姉のひいなさんは、にやにやしながら聞いている。
その時だった。
「あ、みんな集まってるね! こんばんは!」
蘭だった。アンカもいる。
ヒロヤの顔が真っ青になり、それから赤くなった。アンカはともかく、蘭は組織に面が割れているのである。
「岡田君、俺の彼女の藤澤蘭や。よろしくしたってや。」
「英凛短期大学二年の藤澤蘭です。よろしくね。」
名前を二回も言った。他人の空似の可能性も無くなった。そのあとでアンカが
「あたしは慶徳女子体育大学三年のアンカ=ラバンツ。ルーマニア人だよ。」
蘭が渡部の彼女だった事を俺は今更ながら思い出したのだが、そんな事より、蘭がヒロヤの隣に腰掛けたので、俺も気が気でならなかった。
「元気にしてた?」
「まあ、何とかね。」
ひいなさんはアンカにワインをついでやり、蘭は隣のヒロヤに
「お一つどうぞ。」
と、しなを作ってビールをついだ。
「ありがとうございます。」
ヒロヤは固まっていた。敵の新型が隣にいる事と、美人に酒をつがれている事の両方が原因らしい。頭の固そうなヒロヤが、蘭の仕事を聞いたら、変身し出すかも知れない。更に、もう一つの敵組織の新型と、酔っぱらいのウラジーミルも同席していると知ったらどうなるだろう。
そんな心配をよそに、渡部が大声で
「もう一回、乾杯!」
ヒロヤは酒に弱かった。蘭にさんざんつがれて酔っぱらい、その膝枕で眠った挙句、かわいいなどと蘭に気に入られて、その日は全員分のほぼ全額を蘭が支払ってくれた。


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