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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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修学旅行-28

修学旅行が終わった翌日。部活を休み、相談室へ向かう。鍵を開けている百合香が居た。安西くんも一緒だ。安田くんは私に気づくと、気まずそうに顔を逸らした。百合香も私に気づく。安心したように微笑んだ。3人で中に入る。相談室に入るのは初めてだ。仕切りがあり、奥には2人がけのソファが向かい合う形で2つ。コンロ付きのキッチンまである。

「棚の紅茶、飲んでいいって。とりあえず淹れましょうか」

「ああ、私やるよ。2人は座ってて」

安西くんと百合香が向かい合って座る。お湯を沸かし、紅茶を淹れる。

「…あのさ、鈴木」

安西くんが口を開いた。次の言葉を待つ。しばらく待って出てきたのは"ごめん"の一言。

「俺は…お前が羨ましくて嫉妬してた。何にも縛られずに自由に生きるお前に。…女らしくしろとか、親から言われたことないだろ?」

「ああ。私の母さんもこんな感じだからなぁ…」

「…俺は昔から…親に"男らしくしろ"ってよく叱られた。けど本当は…」

安西くんが言葉を詰まらせる。

「大丈夫よ安西くん。海菜は貴方のこと笑わないし否定しない。私もね」

百合香が優しく微笑んだ。彼は固唾を飲み、言葉を続ける。

「俺は…俺は本当は…女として産まれたかった…女の子に産まれて…オシャレしたり…可愛くなりたかった。本当は…か、可愛い物が好きなんだ…ぬ、ぬいぐるみとか…小動物…とか…あ、あと…その…多分、女の子を…恋愛対象として見れない…と…思う…ゲイ…なのかもしれない…」

そう語る彼の身体は酷く震えていた。視線も合わせようとしない。きっと、顔を見るのが怖いんだと思う。

「…そうか。私もだよ。…男として産まれたかったわけではないんだけど…昔から、男の子と遊ぶ方が楽しかったし、カッコいいって言われると嬉しい。女の子からの"カッコいい"は特にね。…私も、同性しか愛せないんだ。今付き合ってる子も女の子」

「…同じ学校の子?」

「というか、百合香だよ」

「…小桜さん…?」

ようやく、彼の顔が上がり、目が合った。大丈夫と安心させるように笑いかける。ぽろぽろと、彼の瞳から涙が溢れ出てきた。ティッシュを渡す。

「…私もね、母から"女の子らしくしなさい"って言われて生きてきたの。女の子なんだから、女の子なんだからって、好きなものも、好きな色も…それから好きになる人も、全て母に決められて、少しでも母の理想の女の子から外れると、怒鳴られたり、押入れに閉じ込められたり、食事を与えてもらえなかったりした。だから…母の…機嫌…を損ねないように…自分を…殺して…」

百合香の身体が震える。ひゅうっと異様な呼吸音が聞こえ始めた。百合香の手を握る。強い力で握り返してきた。深呼吸をし、続ける。

「…だから私も…海菜が羨ましくて仕方なかった…自分の心のままに生きる自由なこの子が。羨ましくて…妬ましかった。貴方の海菜に対する苛立ちも、そういう…理由なんじゃないかしら。…違う?」

こくりと安西くんは頷いた。

「…鈴木も小桜さんも…強いんだな」

「…海菜が居てくれたから」

「…私はただ、親にも周りにも恵まれてただけ。自分らしく生きていいよって、皆が言ってくれたから。皆が私を認めてくれたから自分らしく居られるんだよ。…安西くんも、自分らしく居ていいよ。本当の自分を否定されるのが怖いなら…私達の前だけでもいいから本当の自分を解放してあげて。そこから少しずつ味方を増やしていけばいい。私たちもそうやって味方を増やしてきてるから」

「…ありがとう2人とも。本当に…」

「…いいわよ。気がすむまで泣いて」

「…お茶のお代わりいる?淹れるよ」

「ありがとう…」

柔らかく笑う彼は昨日の横暴な彼とはまるで別人だった。昨日の彼は何かに取り憑かれて居たのではないかと思うほど。こっちが本当の彼の顔だというなら、これから先も仲良くなれそうな気がした。


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