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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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修学旅行-2

「私さ、乗り物の中から外の景色見るの好きなんだよね」

新幹線の中、窓の外を眺めながら、隣の席の海菜が呟く。他の席は大体女子同士、男子同士で固まっている。ラブラブだなとか、同じクラスの男子に散々からかわれた。こういう時だけは、同性同士なら良かったのにと思う。男女の友情だって、成立すると俺は思う。少なくとも、彼女とはこれからも良き友人として付き合っていける。そう断言できる。

「あのさ、鈴木彼氏いるんだろ?彼氏嫉妬しねぇの?それともやっぱ望が彼氏なの?」

向かい側のクラスメイトのが声をかけてきた。安田明。俺は嫌いとまではいかないが、彼が苦手だ。多分、海菜も。彼の方は一切見ずに、少しイラついたような声で答える。

「なんども言うけど、望は親友だよ。だから友達以上には仲良いってだけ。親友と仲良くするくらい、許してくれるよ」

窓の外を眺めたまま、海菜が答える。
今はもう、小桜さんと海菜の関係を心の底から応援出来るくらいには吹っ切れている。けれどまだ、恋心を捨てきれたわけではない。

「親友ねぇ…だとしても距離近いよなぁ…本当になんもねぇの?」

「無いよ」

彼女が即答し、溜息をついた。この手の質問は、一緒にいると嫌になる程されてきた。特に彼は何度否定しても、しつこく聞いてくる。正直疲れるのはわかる。

「結局、鈴木の彼氏って誰なの?いつも"あの子"って言うけど、歳下なの?他校生?この学校?」

「…安田くん、しつこいなぁー…相手のことは秘密。これ以上はもう喋らない」

「えぇ…なんでそこまで隠すのよー」

「向こうがシャイなんだよ。オープンにしたがらないんだ」

「とか言って、本当は彼氏なんていないんじゃないの?」

私は "彼氏"が居るとは一度も言ってないよと、彼女は窓の外を眺めたまま小さく呟いた。隣にいる俺も何とか聞き取れるような、本当に小さな声だった。

「それとも、実は相手は女の子だったりして。だから話せないとか」

海菜は答えない。それを肯定だと受け止めたのか、彼が顔をしかめる。

「え、図星?まさか鈴木、レズなの?」

馬鹿にしたような言い方。うるせぇよと低い呟きが聞こえた。膝の上に置かれた彼女の拳がぎゅっと握られる。怒りを我慢しているように見えた。

「…しつこいぞ。話したくないって言ってんだろ」

少し強めの口調で注意する。むすっとしつつも、ごめんと小さく謝った。それ以上は何も聞いてこなかったが、少し周りがざわつき始める。視線が俺たちの方に向いている気がした。少しだけ、空気が悪くなる。握られた彼女の拳が緩む。はぁ…とため息が聞こえた。

「ごめん望…怒ってくれてありがと」

「…気にするな。大丈夫か?」

「…平気。ちょっと気分は悪いけど。…そのうち治る。少し寝る」

リュックの中からブランケットを取り出し、それに包まる。リュックを抱き、窓際の肘置きにタオルを積み、そこに頭を乗せた。

「…ブランケット持参かよ。元から寝る気満々じゃねぇか…」

「…車内冷えるかなと思って。今女の子の日だから腹痛いし、眠いし…ちょっと…これ以上彼と話す余裕ない…」

「…ああ…だからか。辛くなったら言えよ」

「…ありがとう」

男の俺には生理痛の辛さは一生分からないが、何かしてやれることはないかと思い、ネットで調べたことはある。男がそういうことに詳しくなってしまうのは、気持ち悪くないだろうかとも考えたが、海菜には望のそういうところ優しいと思うと褒められたことがある。

「…ん…」

さっきまで話していたはずなのに。ふと隣を見ると彼女は眠っていた。ブランケットをかけ直し、髪に触れる。耳に手が当たったところで彼女が、ん…と妙に艶かしい声を漏らした。その声でハッとする。彼女の髪に触れた手を慌てて引っ込めた。廊下を挟んで向かい側から視線を感じた。溜息を漏らさずにはいられない。

「…星野ってやっぱ、鈴木のこと好きなの?」

ニヤニヤしながら安田が問いかけてきた。懲りないなと思いつつ、正直に答える。

「…片想いだよ。一回フラれてるし」

「一回フラれたくらいで諦めるなよー」

男として生まれた時点で、彼女の恋愛対象から外れていると知っても、同じことが言えるのだろうか。何も知らないくせに。と、出かけた言葉を心の奥底に押し込む。

「…俺じゃ、ダメなんだよ」

呟いた声は、誰にも届かずに消えた。

「アキ、いい加減にしろよ。気になるのは分かるけどさ…。悪いな、望。こいつも悪気があるわけじゃないんだ」

彼の隣の席の上野 守(うえの まもる)が溜息をつきつつ止めた。アキというのはあだ名で、安田の下の名前は明。安田は苦手だが、その幼馴染である上野とは、部活が一緒ということもあり、割と仲がいい。彼のことを嫌いになれないのは、守のフォローのおかげもあるかもしれない。


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