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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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修学旅行-18

「…すまん、ちょっと休んでいい?」

動物園に着くなり、急に腹痛がやってきた。近くのベンチに座る。即座に望が自販機へと走っていく。

「…そういや鈴木さん、1日目から体調悪そうだったよな。大丈夫?」

「1日目の新幹線の中とかめちゃくちゃ機嫌悪くなかった?」

「あーあれは安田くんがしつこかったのもある…」

「すまんな…アキ、鈴木さんのこと気になるみたいで」

「俺も近くで聞いてたけどあれはなぁ。今日一緒じゃなくて良かったな」

「アキも反省してたし、もうあそこまでしつこくは聞かないと…思う。てか望はどこ行ったんだ」

上野君の言葉に、そういや居ないな…と杉野くんがキョロキョロした。望がペットボトルを持って帰ってくる。

「王子、どうぞ」

差し出されたペットボトルと小銭を交換する。普段の望は素直に受け取ってくれるが、主人にお金を出させるわけにはと受け取りを拒否された。アレクのこういうところは本当にめんどくさい。多分、ルーク王子も同じことを思って居たと思う。小銭を無理矢理渡し"ルーク王子"として"アレク"に声を掛ける。

「君の中では主人かもしれないけど、"僕"は君と対等な立場で居たいんだよ。君は"僕"の騎士である以前に、一番の友人でもあるから」

「…友人など…私には勿体ないお言葉です…」

望…もとい、アレクの言葉に2人が苦笑いした。

「…鈴木、めんどくさくなんない?」

「まあ…正直、早くいつもの望に戻ってほしいとは思う」

「アレクは堅すぎなんだよー」

へらへらと笑いながらペシペシと望の肩を叩く上野君。いや、多分今はギルバートだ。望と私に釣られてキャラが出てきている。お前は軽過ぎるとアレクはため息をついて返した。急な変わり様に唖然とする杉野君の視線でハッとし、頭を抱えた。

「…いかん…釣られる…」

「すまんな上野くん…。なるべく私もキャラを表に出さないようにする」

「…そうしてくれると助かる王…じゃない。鈴木さん…」

演劇部員は皆多重人格なの?と杉野君が苦笑いした。というか、引いている。

「まあ…望のこれはそれに近いかもなぁ…にしても私、1日目からカモミールティーばっか飲んでるなぁ…」

「そういや気になってたんだけど、なんでカモミールティー?好きなの?」

「いや。別に好きでは無い。生理痛に効果あるんだよ」

そうなんだ。と上野君と杉野君が気まずそうに私から顔を逸らした。しまった。濁すべきだったか。

「…鈴木さんも女の子だもんな…そうだよな…」

「なんか…悪い」

「ああいや、気にしないでくれ。今日はそこまで酷くないから、もう少し休んだら行こうか」

「俺らにはその辛さはわからないけど…辛くなったらすぐ言ってくれ。無理はするなよ。けど星野、よくそんなこと知ってたな。妹かお姉さん居る?」

「いえ、一人っ子です」

「え、じゃあなんで…」

「…調べました」

「すげぇな…俺は無理だわ」

「愛だな…」

「私は王子のこと、お慕いしておりますから」

そう言って望は少し寂しそうに笑った。口調も台詞もアレクだったが、アレクの顔ではない。

「…俺が女子だったら、イケメンにここまでされて惚れない理由がないな」

「…わかる。鈴木さん凄いな…」

「てか、星野が勝てない鈴木の恋人って何者なんだよ…」

「普通の子だよ」

「どこに惚れたかだけ聞いてもいい?」

「一目惚れ」

「マジかよ。すげぇな。てか鈴木、一目惚れとかするタイプなんだ」

「鈴木さんからアプローチしたの?」

「それとなく気持ちを確かめてから、ぐいっと」

文字通り押し倒した。と出かけた言葉を飲み込む。

「そういうところ男らしいよなぁ…」

「女子からモテる理由もわかる…」

「そういや、バレンタイン凄かったって聞いたけど…やっぱ、ガチで告白とかされんの?」

「大体は憧れだけど、本気で好きって言われたことも何度か」

「マジかぁ…やっぱ、そういうのあるんだな…」

「元々同性しか愛せないって人もいるし、同性愛者ではないけど同性を好きになっちゃったって人もいるよ。私に告白してくるのはどちらかといえば後者の方が多いかな…」

「鈴木と星野はそういうのに対して偏見とかなさそうだな。俺は…そういう人が居るって頭では理解していても、自分が同性から告白されたら気持ち悪いって思っちゃいそう…」

「…そう思うこと自体は罪じゃないんじゃないかな。違う人間なんだ。理解出来ないのが当たり前だよ」

まるで自分を正当化しているように聞こえた。私だって、異性愛は理解出来ない。杉野くんはまだ、そのことは知らない。

「大事なのは、理解出来ないからって真っ向から否定しないことじゃないかな。杉野くんはきっと、同性から告白されても、馬鹿にしたりはしないでしょ?」

「ああ…まあ…」

「それだけで充分じゃないかな」

少なくとも私は、それで充分だと思う。理解しようとする気持ちだけで。気持ちを否定しないだけで。口には出さず、心で呟く。
望を含めた3人が言葉を失う。

「あれ、2人とも…もしかして私に惚れちゃった?」

冗談っぽく言うと、それはない。と2人の声が揃った。

「そういう返し、自分に自信がないと出来ないよな…」

「俺には無理だ…」

「俺も…てか星野、さっきから全然喋んないけど…大丈夫か?」

「ん…ああ、悪い。ちょっとボーっとしてた…」

そう答える彼は、アレクではなく望だ。
戻った…と私を含めた3人の声が重なった。


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