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わるい娘、メンヘラビッチとの出会い
【学園物 官能小説】

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彼は生き残れなかった、でもカッコいい生き方をした、だから花を手向けよう-1

 葬列はいかにも寂しい、あたしとママと船橋と神尾のお母さんと、神尾の自宅で執り行われるだけのお葬式。
「何だか寂しいわね、順子」
 ママが言った言葉に、ドキリとする、ああこの人クラスメイトのお葬式にまでしゃしゃり出てきて、そんな人の気持ちを逆なでするようなこと言わないでよって、肘でママをつっつくの、(しぃ〜〜〜! 失礼な事言わないで、ママ)
「グスっ」赤く腫らした目から光る雫を一つ流す船橋だ、この娘だけだった、泣いているのは。
 お坊様がお経を読む後ろで、ママは少しむくれた様に、順子から目を逸らすの、この人を他の家の人と逢わすのが、順子はとってもいやだ。
 お経の後、遺影をみながら彼はムスリムじゃあなかったのかなって、イスラム式のお葬式なんてあたしは知らないけど、どうして彼が熱中症なんかで死ななきゃいけなかったの、唱えるのはお念仏なのにさ。
「最後、子供に触れてあげてくださいね」
 お母さんがそうおっしゃるので、彼の死に顔に触れることにする、ほりは浅いのに青い目もめくるのが怖くて、順子の皮膚と彼の皮膚の色が違うのが儚く思えて、彼に触れると、ゾッとする位冷たくて、蝋のように透き通って、青白くて、何かが怖くなってさ、触れたのはその一度きりにしたかったのに、不思議と動かない彼を可愛く思えるの。
「夫が息子の事を叱ってね、表に、出されて暫く立っていて……」
 アパートのお台所から、ぴっちゃん……ぴっちゃん……水滴の垂れる音が気になるくらい、彼のお葬式後の通夜ぶるまいは寂しい、確かにママの言う通りだけど、それを口には普通しないのにね。
 神尾君のお母さんも、親族が来てくれればいいなって、思ったんだろう、でもこの人見てると確かに親族から避けられるって思うの、あたし薄情なのかもしれないね、スシローって書いてあるテイクアウトのお寿司、どっさり用意してたのに、こんな量あたし達だけじゃたべきれっこないもの、ぴっちゃん、ぴっちゃん……ここに居たくないって、彼のお父さんはヘルツェゴビナに暮らしてる、そりゃあ日本になんかおいそれと来れる距離じゃないもの、内戦から逃れやって来た先で子供は死んだ、お母さんの間違った対応でさ。
「熱を出した後、夏風邪かなって……あったかくして寝かして……」
 命が失われるって、ごく当たり前のことなのに、人間が死ぬ確立なんて絶対100%なのに何かがやりきれない、もっと生きて一緒にいたかった、いきているだけでもいい、薄々気が付いていたのかもしれないけど、彼には何も返してあげられないまま、あっという間に逝ってしまった。
「気が付いてあげられなくってねえ」
 一体この母親も誰に、何を言い訳しているんだろうって、懺悔の値打ちなんかコレッぽっちもないのに……きっと彼は隠してた、身体にできた痣をさ、だから暑いのに袖の長いものきてたんだって、さっき怖くなったのそんなもの見たく無かったから、彼もあたしと同じ境遇にいるなんて信じたくもない、厭だ、こんな世界嫌だ。
「そんなに、ご自分を責めないで下さい」
 キタァ〜〜〜〜、キタよ、コレ、お前が言うな大賞だよって! やっぱりママだよっていう。週一であたしとしている事、ここで喋っちゃおうか? アノ時のママの顔ってアレは、オンナの顔してるんだよって、あたしとのキスは親愛のキスなんかじゃなくって、性愛のキスでしょって、ここでばらして家族をめっちゃくちゃにしてみたいって順子は思っている。
 ダメだよ、順子、そんなことしたら取返し付かないよ、絶対しちゃだめ、抑えて順子って感じで、必死に激情を堪える、ここは我慢するしかない、もう今更彼は生き返ることなんてありっこない、彼は『事故』で死んだことにする方がきっと良い、内縁の夫とかいう男に虐待されていたなんてことにはしたく無かった、だからあたしは一切そのことについては話さないことにしたの、彼の尊厳を守るために、彼は生き残れなかった、だからといって、死体の彼を蹴ることはしないだけ。
「グスっ、グスっグスっ、うぅぅぅグスっ、グスっグスっ」
 堪え切れず泣き出す船橋、彼女のちいさな恋は終わった、おそらくは母のせいで、でもそのことに彼女が気が付いているか聞くことはあたしには出来ない、知らんふりをすることがあたしにできるせめてもの事、汚くたっていい、これ以上船橋を汚さない為にできることをあたしは選択したの。


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