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梨花
【その他 官能小説】

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梨花-9

 梨花の友達が働いているサパー・クラブは赤坂で銀座からは近いが、歩いて行ける程ではない。2人は喫茶店で30分ほど過ごして人波が引くのを待って外へ出た。
 梨花はボリュームのある体のとおり声量が豊かでなかなか聞き応えのある歌を歌う。店は広くもなく狭くもなく、客もちらほらと程良く混んでいるという感じ。しかし流石に場所柄銀座よりも若い客が多い。サテンのロング・スカートにスパングルのチューブという格好はまるでプロ歌手のステージ衣装のようで、客は梨花が店に入った途端に眼を奪われていたようである。梨花がマイクの前に立つと皆話をやめて拍手し始めた。そしていよいよ梨花が歌い出すとその圧倒的な声量に呑まれてしまったようだ。曲はセリーヌ・ディオンのビー・マイ・マン。頻りにオサムの方へ身振り手振りで貴方の為に歌っているのよという雰囲気を出すのだが、オサムは全く無関心を装って一人で飲んでいる。その内梨花の友達のヨーコがやってきてオサムの隣に座り、
 「凄いわね、そこらの歌手なんかに負けてないわね」
 と言う。
 「今時の歌手なんて見てくれだけじゃないか」
 「うん、でも梨花は見てくれでも負けてないわよ」
 「それはそうさ」
 「まあ、惚気てる」

 梨花が盛大な拍手に迎えられて帰ってくると暫くヨーコと2人で話の華を咲かせていたが、客の多くはそんな2人を遠くから眺めて酒の肴にしている風である。ヨーコの方は特に変哲もないワンピースだが、くっきりした人形のように整った目鼻立ちと長い黒髪がなかなか素敵で全体にスリムな体つきの日本的な美人である。外人風の梨花とは好対照だった。この店のママの娘がヨーコの友達なんだそうで、ヨーコと梨花は以前銀座で一緒に働いたことがあるという仲である。梨花が今働いている店とは別の店で、その頃はオサムと梨花は知り合っていないが、その後ヨーコは梨花とオサムが一緒に住んでいる家に何度も遊びに来ているから、3人は共通の友達と言って良い。ヨーコにはかなりの年のパトロンがいて、
 「あれ位の年になって若い女を囲ったりするとあっちの方はしつこくてねちこくて大変だろうな」
 とオサムが言うと
 「オサムは何でも自分を基準にして考えるからそういう厭らしいことを言うのよ」
 と梨花がたしなめたが、
 「当たり前じゃないか。他人を基準にして考える奴なんかいるのか?」
 と平然としている。

 「ゴメンネ、ヨーコ。こいつ酔っているから」
 「いいのよ、飲みに来て言いたいことが言えなかったらつまんないじゃない。でもね、私のおじさんは残念ながら淡泊なのよ。私は観賞用みたいで持てあましちゃうわ」
 「おお、言いますね。持てあますって何を持てあますんですか」
 「私のプッシーちゃんが寂しがって泣いているっていう意味」
 「そうか、それなら梨花がいない時にちょっと話をしようか」
 「こら、一体何の話をするのよ、私がいない所で」
 「いやその・・・あのね。ボ・ボクの友達の男がね・・・」
 「バカ、話を作るんじゃないよ。急にボクだなんてしおらしくなっちゃって、本当に男って奴はもうどうしようも無いね」
 「いいじゃないの。彼、梨花がいないところで私に会ったりすると照れちゃってまともに話も出来ないんだから。梨花といる時だけよ。私をからかってるんじゃなくて梨花をからかってんのよ」
 「それは心外だな。ヨーコさんと二人でいると何で俺が照れなくちゃいけないの」
 「だったら梨花がいない所で今度ゆっくり下の話をしようネ」
 「おいおい、ヨーコまで調子に乗っちゃって、2人とも私をなんだと思っているの。こうなったら酔っぱらって暴れちゃう」
 「梨花が酔っぱらう程飲んだらママが喜ぶわ」

 実際梨花は酒豪で、ボトル1本飲んでも殆ど酔ったような様子を見せないのである。反対にオサムは2〜3杯で真っ赤になってしまい、あとはだらだらと不思議にいくらでも飲めるのだが、それでもボトル1本というには程遠い。時間をかけて頑張ってもせいぜい半分も飲めば限界であろう。


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