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梨花
【その他 官能小説】

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梨花-39

 翌週には中野の姉さんがやって来た。豪華なアルバムを祝いの品だと言って持ってきた。だからそういう物は受け取らないとオサムが言うのに全く取り合わず
 「馬鹿ねぇ、オサム君に上げるんじゃ無いのよ。梨花さんに個人的に上げるのよ。私の妹になったんだから、妹に何か上げても亭主がうだくだ言うこと無いでしょ」
 まあこの人には何を言ってものれんに腕押しだし、豪華だと言ってもたかがアルバム、お返しが必要になる程高い物ではないだろうからまあいいかと諦めた。
 「ねぇ、梨花さんっていつもそんなセクシーな格好してるの?」
 「これってセクシーですか?」
 「セクシーよ、だって体の線が全部そのまま出てるじゃない」
 梨花はいつもと同じスパッツとタンクトップという格好で、自分では全くの普段着感覚でいる。オサムに付けられたキスマークが丁度黄色に変色して醜くなっている頃なのでそれがはみ出さないよういつもほどの面積の小さいタンクトップでは無いから、セクシーだなどと言われて少し面食らっている。キスマークがはみ出しているのだろうかと思わず胸を見下ろしたら
 「そうじゃ無いわ。下よ、そのスパッツ」
 「ああ、これですか」
 「まあ家の中だからいいけど」
 「え? 私これで買い物にも行きますけど」
 「えー。そんな格好で出て良く襲われないわね」
 「襲われませんよ」
 「でもジロジロ見られるでしょ」
 「ええ。でもオサムが見せとけ見せとけ、サービスしてやれって言うから」
 「変わってるわねぇ。オサム君は」
 「えぇもう。昔は変わって無かったんですか」
 「昔の話はいいの」
 とオサムが言うのに全然構わず中野の姉さんは話す。
 「昔はネ、自分の部屋に籠もりっ切りで全然出て来ないから自閉症なのかと思った」
 「そうだったんですか」
 「話しも殆どしないし、表情もいつも仏頂面」
 「仏頂面は今でもそうですけど」
 「これが俺の普通の顔なんだ」
 「でもね、なんかの拍子に笑うでしょ。そうするとこの子凄く可愛いの。まるで雑誌の表紙にでも載せてやりたいような笑顔すんのよ」
 「『この子』は止めてくれよ、姉さん。俺もう結婚もしたし立派な社会人なんだから」
 「ほんとね、この子がこんな可愛い美人と結婚するなんて思いも寄らなかった」
 「『この子』はやめてくれって言うのに」
 「ハイハイ、オサム君」
 「でも本当にこの人の笑顔って可愛いですね。私も初めてこの人に会った時それにコロッと参っちゃって」
 「そうでしょ。多分そんなことだろうと思った」
 「それより姉さん。この間の払いだけど1人1万円じゃ全然足りなかったんだろ? 俺達の分払うよ」
 「いいのよ、そんなのは。いっちょ前の口利くんじゃないの」
 「払わせてくれよ」
 「そのお金で何かおいしい物食べなさい。オサム君もうちょっと太った方がいいわよ」
 「こいつが作ってくれないからだ」
 「酷いっ。私が作ると『お前はそんなことしないでいい』って言うじゃない。私は作って上げたいのに」
 「そうか? そんなこと言ったか、俺」
 「言ったわよ。よーし、じゃあこれから毎日作るから食べなさいよちゃんと」
 「いいよ。お前の料理食べると腹具合がおかしくなるんだ」
 「もーう、酷い。私泣いちゃうから」
 「冗談だよ、冗談。お前の料理は美味いからつい食べ過ぎて腹具合がおかしくなるんだ」
 「もう遅い。明日から作って無理矢理でも食べさせるから」
 「分かった分かった。俺はな、お前の料理に不満は何も無い。だけど作って欲しくないんだ」
 「どうして?」
 「そんなことする暇があったらマニキュア塗ったり、化粧したり、することがいくらでもあるだろ。俺はお前にそういうことをして欲しいんだ」
 「泣かせるー。オサム君は梨花さんに糠味噌臭い奥さんになって欲しくないのよ。そうでしょ?」
 「うん。まあそういうことだな」
 「羨ましいわね。同じ兄弟なのにうちのに爪の垢でも飲ませてやりたいわ」
 「血が繋がってないから」
 「えっ? そうだったの?」
 「嘘よ。あんな奴と血が繋がっててたまるかと思っているだけ」
 「どうしてそんなに仲が悪いんですか?」
 「別に悪く無い。お前ちょっとコーヒー入れてくれ」
 「なんで? やっかい払いするの?」
 「いやちょっと喉が渇いたんだ」
 「それじゃ入れてあげる」
 


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