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梨花
【その他 官能小説】

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梨花-33

 「あのね、体を売ることが何故悪いことなのかっていうとこれは案外難しい問題なんだと思いますよ」
 「それはいけないに決まってるじゃない。男の人は都合悪いだろうけど」
 「いや、道徳的にいけないと言うのは知ってます、勿論。ただ道徳というのはもっと実際上の理由が普通はバックにあるんですよ。例えば人を殺してはいけないというのは自分が殺されることを考えればそういう道徳が無くてはいけないんだってすぐわかるでしょ。だけど売春は厭がる人を暴力や金で縛ってやらせるのは論外として、例えば今流行の女子高生の援助交際と称する売春みたいに、遊ぶ金ほしさに自発的にやっている奴はそれとは明らかに違うでしょ。まあ女子高生みたいな未成年者は判断力が劣るから問答無用で違法だって言ってもいいと思うんだけど」
 「つまり大人がやる売春は道徳に反しないって言うの?」
 「いや、道徳には反するんです。ただ、その場合にそういう道徳があるのは何故だろうっていう問題です」 
 「そんなこと考えたことも無いけどやっぱり売春はいけないんじゃないのかしら」
 「どうしてですか?」
 「どうしてって性風俗が乱れるから」
 「性風俗が乱れるとどういう不利益が人類に及ぶんでしょうか?」
 「えっ? 人類に及ぶかなんて言われるとちょっと分からないけど」
 「そうでしょ。どんな動物にも発情期っていうものがあるのに人間にだけはそれが無くていつでもやれるっていうことと関係があるんじゃないかなと僕は思っているんです」
 「どういうこと?」
 「つまり動物には発情期ってものがあってセックスを例えば餌を獲得する為の手段にしようとしてもそれが出来ない訳ですね。発情期でないと自分も相手もやる気にならないから、セックスを何かの手段に利用するってことが出来ない訳です。ところが人間はいつでもやれるから、やりたくなくてもやりたい相手探して金をくれればやってもいいよって言える訳です。それでどうして人間だけそうなってるんだろうと考えると、結局人間は自然界では非常に弱い存在だから子孫を残す為に沢山子供を作らないといけない。だけど魚みたいにいっぺんに沢山の卵を産んだり出来ないんでいつでも発情しているという風に神様が人間を作ったんじゃないかと思うんです。まあ、神様でなくとも自然がと言ってもいいんですけど。そうすると本来は性風俗が乱れてあちこちで大勢の男女がやりまくって沢山子供が出来て、その子供のうちの多くがライオンや恐竜に食われて少数が生き残って丁度いい数を保つっていうのが本来の人間の姿なんじゃないかと僕は思うんですよ。ところが人間は知恵があるから本来弱い生き物だったのに強くなっちゃって数が減らないどころか増える一方になっちゃったんです。それで性風俗が乱れてあちこちでポコポコ子供を作ると人間界全体として見ると自分で自分の首を絞めるような結果になってしまう。つまり大発生したイナゴが地上のすべてを食い尽くしてその後食べる物がなくてみんなバタバタ死んでいくというのと同じです。だから道徳はセックスに対して厳しいんです。何も売春だけじゃないでしょ。例えばさっきのSMクラブだってSMの何が悪いんだ、売春なんてやってないぞって言われるとお互いやりたい同士がやるんだから道徳的には何も問題無い筈なのに、人には言えないっていうのは道徳に反すると暗黙のうちに考えているからなんです。そういう楽しいことを放認すると一般の性意識がますます緩やかになって子孫が増えて、人間界全体が危機を迎える。だから道徳は性に対して厳しいんだと僕は思うんです。」
 「それじゃ、やっぱり売春はいけないっていう結論になる訳ね」
 「さあ、そこのところが難しくて分からない。だって人間は知恵があるから避妊という手段も考え出したし、人口抑制ということだけが問題であるなら性道徳を持ち出さなくても今の人間の知恵とテクノロジーで十分解決できる筈です。だから何故売春はいけないのか。それは20〜30分で2万も3万も稼げる仕事は他に無いからそれを認めると経済システムが崩壊する、だから売春はいけないんだなんていう人もいるんです。僕はそれは違うと思ってますけど。だって悪いことだとされてるから供給が需要に追いつかなくて高くなるだけで、いいことだとなれば需要より供給が増えて途端に値段なんて暴落しますよ。だから売春を認めると経済システムが崩壊するなんていうのは浅はかな誤解です」
 「なるほどねー。梨花のご主人はやっぱり先生だわ」


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