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梨花
【その他 官能小説】

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梨花-31

 「いや、あんな間近で仰ぎ見たのは初めてだ。なんかこうビラビラの間からおしっこが出てくる瞬間が良く見えた」
 「それ見て感じた?」
 「別に感じなかった。面白いとは思ったけど」
 「オサムって変態じゃないのね。やっぱり」
 「どうして?」
 「喜んで飲んだりするんじゃないかと思ったの」
 「喜んで飲んでたら気持ち悪くなって嫌いになったか?」
 「ううん。そんなことないけどやっぱり飲まない方がいいな」
 「たまたまお前のおしっこが不味かっただけで他の女のなら美味いかも知れない。それでゴクゴク飲んだかも知れないぞ」
 「厭だ、そんなの。どんなことでも私がやるから他の女で試したりしないで」
 「しないよ馬鹿だな。お前のおしっこが飲めないのに他の女のなんか気持ち悪くて飲めるか。あのな、こういう話があるんだ。江戸時代の太夫がお客に口説かれても靡かなかったんだ。太夫というのは遊女の中で最も高級だとされている、つまり最高級の娼婦だな。お客は高い金払って太夫の時間を買うんだが一緒に飲み食いするだけで、寝るかどうかは太夫の気分次第なんだ。最高級の娼婦だからそういうことが許されるんだ。それでその太夫に惚れて通い詰めたお客がトイレに行くからと言って出ていこうとする太夫に『行かないでくれ』って言うんだ。トイレは口実で逃げると思ったんだな。すると太夫が本当におしっこしたいんだと言うんで、それなら俺が飲ませて貰う、惚れたお前のものなら汚くなんか無いって言って、当時は着物だから下着なんか穿いて無いだろ? 裾をちょっと拡げて茶碗かなんか突っ込んでそこにおしっこするんだよ。着物だと隠れちゃうからおしっこする所を見られない訳だ。だけど目の前でやってるんだからトリックじゃないよ。本当におしっこをしたんだ。するとお客はそれを太夫の見ている前でグビグビ全部飲んじゃった。太夫はまさか本当に飲むとは思っていなかったので驚くんだ。だけど、驚いただけじゃない。『お前さんそんなに惚れてくれているなら太夫と言われていたって私も生身の女、意気に感じたからお前さんのものになりましょう』って、そういう話があるんだ。それで俺も惚れるっていうのはそういうもんなのかなと思ってやってみたんだけど駄目だな。お前のおしっこだから汚いとは思わない。汚いとは思わないんだけど、こんなものは飲むもんじゃないっていうのが頭の底に染み付いているから生理的な拒否反応が起きちゃって飲めないんだ」
 「そうかあ。ちょっと感激するわね。いい話ね。それなら私もオサムのおしっこ飲みたいと思うな。オサムのおしっこなら私も汚いなんて思わないもん」
 「うん。だけど駄目だ。生理反応に逆らってまでやることじゃ無い」
 「私ならグビグビ飲めちゃうかも知れないわよ」
 「いや、俺はお前にそんなことして欲しくない。俺に惚れてることは分かってる」
 「でもいい話ね。おしっこ飲むなんて変態みたいだと思ったけど、その話聞いたら急になんか素晴らしいことみたいに思えて来ちゃった」
 「ああ。だけどその客だってうんこ食えって言われたら出来ないだろ。そんなの食ったら正真正銘の変態だ。だからおしっこも飲まない方がやっぱりいいんだよ」
 「そうねえ。うんこ食ってるの見てそんなに惚れてくれてるならお前さんと寝てあげましょうとは言わないわよね。気持ち悪くて逃げ出すわよね」
 「そうさ」
 「オサムって相当な変態だと思ってたけど変態とは違うわね」
 「いや変態なんだけどまだ修行が足りないんだ」
 「いいのよ、変な修行はしないで」
 「やっぱり変態は厭か?」
 「ううん。オサムがやることなら変態でもなんでもいい」
 「結婚したからか?」
 「うーん、別にそうじゃないわ。でもやっぱりそうなのかな」
 「お前指輪買った時、結婚したらタトゥーでもピアスでもしていいって言っただろ」
 「出たー。いつそれ持ち出すかと思ってビクビクしてたのよ。オサムってそういうの絶対忘れない人だから」
 「ふふふ、覚悟はいいか?」
 「しょうが無い。そういう約束だから」


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