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梨花
【その他 官能小説】

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梨花-3

 「こういう服を着て困るのはネ、沢山食べると途端にお腹が出っ張って醜くなることなのよね」
 「その代わり伸びるからジーンズみたいに苦しくはならないだろ」
 「これは締め付けがきついから苦しい。でもいつも着ている奴は良く伸びるからきつくないの。だからお腹を見るまでこんなに膨れちゃったって気づかないのよね」
 「いいじゃないか、へこんだ腹もいいけどルノワールの裸婦みたいに腹が膨れているのもセクシーだと思うよ」
 「それはオサムの考えでしょ。世間はそう考えてくれないのよね」
 「いいんだ、俺がおまえの世間だ」
 「何それ」
 「僕の拡げた両手の下にお前の世界がある」
 「なんなのそれは」
 「ポエトリー」
 「又始まった。いいわ、そういうことにしといてあげる」
 「生意気言って、誰が糞まみれのセックスをしてくれる。そんな素晴らしく変態的なセックスなんて誰でもしてくれる訳じゃないぞ」
 「ちょっとやめてよ、人に聞こえるでしょ」
 「別に聞こえて困ることは無いさ。我らは誇りある全日本変態党の党員だ」
 「何よそれは、変なもの作らないで」

 「今日はこういう物を買ってきたぞ」
 「なあに?」
 「ゴムのビキニだ」
 「またそれ穿いておしっこするの?」
 「うん、それもするけど、これを水着の代わりに着て海に行くんだ」
 「えー? 大丈夫かなそれ」
 「うん、ちょっと離れて見れば裸に見えるな」
 「良くそういうのを見つけてくるね」
 「お前を少しでも綺麗に見せてやろうと思って必死なんだ。偉いだろ」
 「なんか私ってブスみたい」
 「いや、更に綺麗に見せてやるっていう意味だよ」
 「でもそれ薄いから着ると割れ目が透けて見えるんじゃないかな」
 「さあ、ケツの割れ目は見えるだろうが前は見えないんじゃないか?」
 「人のことだと思って」
 「いいや、お前は人じゃ無い。俺にとってお前は、俺自身だ」
 「なーんて言っちゃって、でも凄いねこれ」

 梨花は早速身につけてみた。それはくすんだ淡色の黄色のゴムでかなり薄い。コンドームほどでは無いが、指でちょっと突いただけで伸びてくる。下も上もきわめて小さいビキニというのでは無いが、多少透ける。それにもともと肌色に近いし肌に密着するからちょっと見は、裸でいるように見える。乳首などははっきりと浮き上がるし、お尻の割れ目などはまるっきり透ける。
 「これは駄目よ。ほら、前の割れ目だって透けて見える」
 「そうだな。それでもいいんだけど、チャコットで買ったビキニを下に着るか」
 チャコットで買ったビキニというのは、水着ではない。厚手のストッキングのような生地の、小さなTバックである。レオタードの下などに着るものである。

 「ねえ、どうせだったらタトゥシールでも貼っていこうか」
 「なんだそれは」
 「貼ってから剥がすと絵だけ残ってタトゥーみたいに見えるんだよ」
 「ほーお、それはいいな、おっぱいの裾野と股の付け根に蝶々か何かやるといいな」
 「うん、一緒に買いに行こう」

 梨花は身長が170センチある上に胸も腰も大きいから、外人と比較しても負けていない。と言うよりも今みたいにサングラスをしていると髪を赤く染めていることもあって、まるっきり外人そのものである。 日本人はなれした彫りの深い顔立ちだということもある。
 如何に派手な色の溢れる海水浴場といっても、付け睫毛にマスカラ、毒々しい色の口紅、まるで裸のようなゴムのビキニ、胸に蝶、股に薔薇の入れ墨である。梨花は群衆の注目の的になった。街中とは違って開放的な場所だから、梨花を見る視線も皆あからさまである。梨花はこういう時、どんなに恥ずかしくても決して恥ずかしいという素振りを見せない。どんなに恥ずかしい服装でも堂々としていればファッションだということで通る、恥ずかしがっていると厭らしく見えるというのがオサムの信念で、梨花はその点オサムに厳しくしつけられているのである。
 中には望遠レンズで梨花を追い回している素人カメラマンも1人2人では無いが、オサムは全く気にしない。良く撮れた写真があったら貰いたいくらいなものだと思っている。梨花はオサムが気にしないのなら文句は無い。尤もオサムは梨花を見る人の眼に全く気づかない振りをしているが、驚く程観察力の鋭いオサムが気づかない筈は無い。オサムは梨花がオサムの為に意に染まない服を身につけることを喜ぶが、それを見る人の驚きとか感嘆とか蔑みとかいろいろな感情の籠もった反応を見ることにも楽しみを見いだしているのである。


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