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梨花
【その他 官能小説】

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梨花-19

 数日後、梨花は店から帰るとコンピューターに向かっているオサムに後ろから抱きつき、耳に小鳥のようなキスをしてから言った。

 「ネェ、今日荻窪のお兄さんお店に来たのよ」
 「へえ、ひとりでか?」
 「ううん。取引先の社長さんだっていう人ともうひとり連れて」
 「いくら飲んだ」
 「10万円。でも最初だから今日は現金で払っていきますって現金で払ってくれた」
 「そうか。助かったな」
 「なんで?」
 「だって払わなかったら俺が尻ぬぐいすることになるんだろ?」
 「何を言ってるの。名刺を見たら一流会社の課長さんじゃない。オサムよりよっぽど稼いでいるわよ」
 「そうか? それなら助かるな」
 「第一私がオサムにそんなことさせると思ってんの? 例え払わなくてもオサムに迷惑かけたりしないわよ」
 「いいや、そういう訳にはいかない」
 「それじゃもし私が立て替えることになったら指輪を買って頂戴。それでちゃらにしてあげる」
 「どれくらいの指輪?」
 「安いのでいいの」
 「なんで? 安いので良ければ指輪なんていつでも買ってやるぞ」
 「本当? 本当に?」
 「ああ、今までだっていっぱい服買ってやったじゃないか。みんな高い奴ばっかりで、安い指輪だったら買えるような奴ばかりだぞ」
 「服じゃ駄目なの。指輪が欲しいの」
 「指輪なんてお前腐るほど持ってるじゃないか。両手両足全部の指にはめてもまだ余るだろ」
 「だってあれはみんなお客さんに買って貰ったり、自分で買ったりしたもんだもん」
 「誰が買っても指輪は指輪だ」
 「馬鹿ね、そんなこと分かってるわ。オサムに買って欲しいっていう女心が分かんないのかな」
 「馬鹿ね、そんなこと分かってるよ。梨花に買ってやりたいっていう男心が分かんないのかな」
 「またすぐ真似する」
 「いいよ。それなら明日買いに行こう。500万もあれば足りるのか?」
 「うん、何とか足りる」
 「それじゃちょっと今金がないから立て替えといてくれ」
 「漫才やってんじゃないのよ」
 「分かった、分かった」
 「ねぇ、本当に安いのでいいんだけど、ちょっと高いのだと凄く嬉しいな」
 「分かってる、分かってる」
 「返事は1回」
 「ハイ」

 梨花はエナメルのパンタロン・スーツ、オサムはジーンズに薄手のセーターというラフな格好。エナメルのジャケットの下には同じように見えるビスチェを着ているがこれはエナメルではなくポリウレタン加工のものである。エナメルは素材が堅いから大きな梨花の胸に合うようなデザインのものがなかなか無い。どうしても胸を押しつぶすような感じになってしまう。それにエナメルにエナメルを重ねると、くっついてしまって、動くたびに大きな音が出る。それでポリウレタンのビスチェを組み合わせたが、これも梨花の乳房の殆ど上半分は露出している。真ん中が下まで編み紐のようなデザインなので胸は両サイドと乳首だけが隠れているようなものである。オサムがラフな格好で梨花と歩くのは珍しいのだが、今日は指輪を買って貰うというので、梨花があれこれ注文を付けるのを控えたからだ。


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