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梨花
【その他 官能小説】

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梨花-17

 「ねぇ、その服高そうね、いくらしたの?」
 「そんなに高く無いですよ。良かったらこれと同じ物買ってプレゼントしましょうか?」
 「駄目よ。私なんかが着たら不格好な体型が丸見えで笑いもんになっちゃうじゃない」
 「そんなこと無いですよ。結構綺麗な体型されてると思いますよ」
 「いやいや、こいつは矯正下着というのか、補正下着というのか、ガチガチに固めてるんですよ」
 と言ったのは姉の亭主である。
 「これがまた目の玉飛び出る程高いんですよね。下着だっていうのに何十万もするんです」
 と続ける。姉は
 「そういうことはいいの。あんたは黙って食べてなさい」
 とさして怒った風も無く言い捨てて
 「その服の下にはどういう下着を着ているの? さっきからじっと見てるんだけど下着の線が見えないのよ。まさか全然下着を着てないって訳じゃ無いんでしょ?」
 とおばさん丸出しの質問である。梨花がどう答えようか困っている様子なのでオサムが助けることにした。

 「ガチガチの矯正下着を着ているんだ。何十万もした。だからホラ、俺の目玉が少し飛び出てるだろ」
 「馬鹿、あんたの目玉なんかどうでもいいの」
 「姉さんも少し眼が出てるぞ。と言うことは、ちょっと痩せたんじゃないのか?」
 「えっ? そう? 私痩せたかしら。そういう風に見える?」
 「ああ、久しぶりに会ったらなんか顔が痩せたなって感じたよ」
 「オサム君相変わらず女殺しなんだな。こいつにそんなこと言ったら喜んじゃうから駄目なんだよ。毎晩鉄仮面かウルトラ・セブンみたいな変なマスク顔にかぶって必死に何かやってるんだ。顔が痩せたなんて言ったら、俺はこれから死ぬまで鉄仮面と暮らさないといけなくなるよ」
 とまた姉の亭主。
 彼は姉と結婚するまで女と必要以外の口を利いたことは無いという照れ屋で、もともとは長兄の学友である。長兄を訪ねてきて姉を見そめ、姉と口を利いたことも無いのにいきなり親を通して結婚を申し込んできたという、現代には珍しいような内気の人なのである。

 「ちょっとあんたはうるさいの。ほら、あたしの分も上げるから食べてなさい。あんたは食べるのが何より好きな人だから」
 「銀座で働いているんですって?」
 と次兄の嫁さんが聞く。
 「はい、『マハル』っていうクラブです」
 「それインドのタージマハルから取ってるのかな?」
 「あ、皆さんそうおっしゃるんですけど違うんです。なんかフィリピンの言葉で『愛』とか『愛してる』という意味なんだそうです」

 質問の主が長兄だったから梨花はいっそう言葉を上品にしている。いつもの言葉遣いはどうしたんだとオサムは茶々をいれたかったが黙っていた。

 「ほう、するとフィリピン人のホステスさんもいるんですか?」
 「いいえ。それがオーナーは最初フランス語でアムールって付けるつもりがそういう名前の店が既にあったんで友人に相談したんだそうです。そしたらその友人が、それじゃラテン語にしたらいいって教えてくれたのが、間違えたのかわざとなのか、ラテン語じゃなくてフィリピン語だったんだそうです。お店はフィリピン人ホステスはいませんし、フィリピンとは何の関係もありません」
 「ほーう、それは面白い話だな」
 と長兄は全然面白くなさそうな顔で言った。

  「ええ、初めてのお客様とはたいていこの話をするんです。で、その話の続きなんですけど『マハル』には愛とか愛してるとかいう意味だけでなく、値段が高いっていう意味もあるんだそうです。だからうちの店は『マハル』という名前です。そういうと、たいていのお客さんは、一瞬緊張しますね」
 「ハハハ、それはいい。値段が高いぞって警告してる訳だ。そんな良心的な名前の店は無いな」

 話はもっぱら梨花と誰かという形で行われ、梨花以外の人同士で話をすることは殆ど無いという妙な光景になった。しかし他の人たちは互いに行き来して良く知っているが、梨花とは皆初対面なのだから自然にそうなる。梨花は職業柄どんな話でもそつなく処理していたが、流石に疲れたのだろう。散会してオサムと2人になると
 「あーぁ疲れた。1日中バイブ入れっぱなしでいるより、よっぽど疲れた」
 と早速地を出して喋り始めた。


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