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わるい娘、メンヘラビッチとの出会い
【学園物 官能小説】

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楽しい時間-2

「「………………」」
 めんどくさい空気に変わる、この空気が嫌いだから教室に居づらいのに、嫌われていたくない事を確かめずにはいられない、この二人だけには嫌われていたくない事を証明してほしい……とっくに汚れているはずなのに、それでも認めて欲しい順子のめんどくささって。
 バスが陸橋を渡り終え、いよいよ葛西駅が見えてきて、あたしの駅名、葛西。
「私は、別に……どーせ皆から浮いていた存在だし、落ち着きないし、頭わるいから、でも一緒にいていいって思うよ、寄り添いたいし」
 居たらいたでややこしいけど、居なくなったらそれはそれで淋しい女友達だろうな。
「僕は……答えになるかわからないけど、僕の話をしてもいい、少し長い話になるけど」
 なんか暗い顔の神尾で、それだけじゃなく、真剣というか重みがある。
「うん、学校じゃ話しづらいことも、今日だったら時間あるでしょ」
「神尾君の話だったら、聞く」
 あたしたち二人の目をみて、こくりとうなずき、重い沈黙の後に彼の物語を聞くの。
「僕ってホントはね、本当の名前は智燈・ペルコヴィッチっていうの、神尾って苗字は母方のものなんだ」
「え、じゃあお父さんは?」
 あたしは聞きなれない言葉に戸惑う、少なくとも英語、ドイツ語圏の中では聞いたことのない姓だもの。
「ユーゴスラビアって知らないかな? 聞いたことない? 今じゃ幾つにも別れちゃって、お父さんはボスニア・ヘルツェゴビナで暮らしてるんだけどさ」
 彼の話は長く、バスが葛西駅について、臨海水族園駅についても終わらなかった、でもあたしは、あたし達は彼の話に夢中になって、地面に照りつける暑さも忘れるくらい話に夢中になったの。
 智燈君の話をまとめるとこうなります。
 セルビア人、ボシュニャク人、クロアチア人の3民族が内戦に入り、お互いがお互いに攻撃しあい、彼のお父さんの暮らしていたサラエヴォは大変なことになりました。
 確かにその3民族は言葉、宗教、文字に違いがあり、「違う民族」ではあったのですけど、日本人からみて、彼らを見た目などで区別など絶対できないそうです。
 ですが彼らは違いを理由に、お互いに殺戮へと駆り立てていきます。少し前まで、違いはあれども争うことなく、とても共感し合ってさえいたのに、たがが外れ、他民族を生きたまま串刺しにすると言う様な虐殺が繰り返し行われ、民族浄化というおぞましいレイプを武器とする、二次大戦中ナチスすら行わなかった事件すら起こりました。コレは冗談とか、大げさなことを書いているわけでは無く、彼曰く現代におこった現実なんだからってことらしいのです。
 そんな紛争のさなか、お父さんとお母さんとが出会い、二人は日本へと命からがら逃れます、ニコラ・ペルコヴィッチさんは特殊な電気技師で、日本語に堪能だったことが日本に渡る契機となったということなのです。
 ですが文化も違えば言葉も違う、異民族といえば紛争の渦中にあるセルビアやクロアチアよりもっと違う日本人とはナカナカ上手くいかないのも実情のようで、二人は別れてしまいます。
 両親の離婚は彼にある種の思想を植え付けました。民族的違いを乗り越えようと、するより、彼ら異民族の違いを意識するんだ。という思想を彼は発明したのです、それは彼のお父さんがサラエヴォ出身ということも影響していたのかもしれません。
 だからこそ彼の言葉はあたしに響いたんだと思い知らされました、彼のいう同盟とはとてもコスモポリタンな意味を含んでいるんだと思いますし、あたしはそれに期待したいって思うのです。支配したいとか、独占的で縛りの多い愛情とかじゃなくて、もっと大事にしたりされたり、尊重し合える関係性とかです。


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