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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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文化祭-7

「…お、鈴木さんだ」

体育館でダンス部の出番を待っていると、カメラを持った男子生徒に声を掛けられた。望とよく一緒にいる子だ。

「…福田くんだっけ。望とよく一緒にいる」

「福田祐介。よろしく」

「鈴木海菜です。…望は一緒じゃないんだ?」

「星くんは中庭。演劇部の部長さんと話し込んでる」

「通りですれ違わないわけだ…」

「鈴木さんこそ"彼氏さん"とは一緒じゃないんだ?」

望から聞いたのだろう。相手の性別までは話さなかったようだ。そう思うきっとこの先の人生で何度も言われるんだろう。その度にいちいち訂正するのは面倒だ。わざわざ訂正する必要も無いとも思うが。

「今から踊るからね」

「ダンス部なのか。…ん? ダンス部?」

ダンス部には、女子しかいない。相手が男だと思っているなら当たり前の反応だ。

「私の恋人、女の子なんだ。そこまでは望から聞いてないと思うけど」

「ああ、そういう…そうか…」

カミングアウトする人を選んでいないわけではない。直感で大丈夫だと思った人には打ち明けることにしている。そもそも私達は何も悪い事はしていない。隠さず堂々としていればいいと思っている。けれど、それで彼女の心がまた閉ざされるような事があるのなら、カミングアウトする相手は最低限にしておいた方がいいだろう。
なんていうのは建前で、本当は私も否定されるのが怖い。

「んー…なんかすまんなぁ、勝手に男の子だと思ってたよ。思えば星くんも彼氏なんて一言も言わなかったな…」

「普通はそう思うよ。気にしないで。でも、彼女はあんまり公にしたくないみたいだから内緒ね」

「ダンス部のどの子?あの小さい子?」

私から見たらどの子も下手したら一部の男子も小さいが…多分、小春ちゃんのことだろう。

「外れ。同じクラスって点ではあってる」

「そうか、じゃああの綺麗な子か」

「みんな綺麗だからどの子を指してるかわからないな」

誤魔化しているわけではない。一目惚れするだけあって、百合香は他の女の子よりも綺麗だと思うけれど、他の女の子だって、皆輝いてる。

「…鈴木さんってさらっとそういう事言えるタイプ?」

「それよく言われる。私はただ褒めてるだけなんだけどなぁ…
まあ…嫉妬する彼女が見たくてわざとやってる部分も無いとは言えない。けど、全部本心だからね」

「…凄いなぁ…俺は恥ずかしくて言えないな…本人の前じゃなかったら言えるんだけど…っと…始まるね。俺、後ろの方で撮りたいから。じゃあね」

「うん」

ブザーの音と共に、福田くんはそそくさと、後ろの方へカメラを持って去っていった。望は来ないのだろうか。体育館の入り口を見る。
控えめに、ゆっくりと開いた。望だ。それから、部長。
部長は私を見つけると安心したように駆け寄ってきた。私を挟むような形で2人は座る。

「…何故わざわざ私を挟んで…」

「あたしは鈴木くんの隣に座りたかった」

「俺も海菜の隣に座りたかったから」

「…喧嘩でもしたんです?」

「別にそういうわけじゃないよ」

お静かにお願いしますと進行役の生徒会の生徒の声が響いた。会場が静まり返り、スポットライトが当たる。

「えー、皆さま、こんにちは。ダンス部です」

小春ちゃんだ。小さい、可愛いと客席がざわざわしている。小さいという言葉に、一瞬小春ちゃんの笑顔が引きつったが、私に気付くと自然な笑顔に戻る。

「本日は、私達新入生のみのパフォーマンスとなりますが…先輩方に負けないよう、この日のために練習を重ねてきました。少なくとも普段から若さと、元気と、人数は私たちの方が上ですが…」

会場から笑いが起こる。小春ちゃんは少し嬉しそうに笑って続ける。

「技術はまだ敵いません。しかしすぐに追いついて…いえ、追い抜いてみせます。…それでは、私達のパフォーマンスをどうぞお楽しみくださいませ」

片足を一歩引き、恭しく礼をし、舞台袖に戻っていく。緊張したーという彼女の声がかすかに聞こえた。再びブザーが鳴り、幕が上がっていく。


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