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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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文化祭-4

文化祭当日。俺は福ちゃんと一緒に中庭のベンチに座り込んでいた。

「星くんどっか行きたいとこある?」

「…いや、特に無いな…」

「そうか…。俺も特に行きたいところはないけど…皆の写真は撮りたいな」

「そういや写真部なんだっけ」

「そう。昔からカメラ好きでね。まあ…うちの学校の写真部は残念ながら、部活やりたくない人が集まる幽霊部員のための部活みたいなものなんだけど…」

「あれ、星野くん。鈴木くんは一緒じゃないの?」

声をかけて来たのは、演劇部の部長だった。

「部長…こんにちは。ああ、福ちゃん、この人はうちの部活の部長の笹原さん」

「笹原 歩美(ささはら あゆみ)ですー。よろしくー」

「福田祐介です」

緊張した様子で小さく頭を下げる。

「三年生は1日自由行動でしたっけ」

「そうそう。けど皆彼氏と一緒に周るからって言って…あたしは1人寂しくうろついてたってわけ。後輩ちゃん達の劇は見に行くけど…それ以外予定ないからなぁ…」

「俺もそんな感じです」

「そうか。時間まで一緒にここに居てもいい?」

「…構いませんけど…福ちゃんはどうする?」

「俺は…写真撮りに行ってこようかなぁ…星くんはここで時間潰すんだろう?」

「ああ、そのつもり。気が向いたらどこか行くかもしれないけど…」

校内をうろついて海菜達とすれ違うのも辛い。

「じゃあ、別行動だな。演劇部の舞台、写真撮りに行くからな」

「うん、また後で」

去っていく福ちゃんの背中を見ながら、なんだか気を遣わせちゃったみたいで悪いねと部長が苦笑いした。

「…にしても鈴木くんと別行動、珍しいね」

「今日はちょっと…顔を合わせたくないので…」

「うん?喧嘩でもしたの?」

「…喧嘩は…してないですけど…好きな人が恋人と居るところ見るの辛いじゃないですか…」

「鈴木くんが恋人と?…さっきすれ違った時は女の子2人と一緒だったけど…」

ああ、そうだ。恋人というと一般的には異性なんだ。最近そのことを忘れかけている自分がいる。

「…その2人のうちの背の高い方が恋人です」

「なるほど、女の子かぁ…だったら尚更辛いよな…」

「海菜は気にしないと思うんですけど…海菜の彼女は気にすると思うので、このことは秘密でお願いします」

「ん、大丈夫。誰にも言いふらす気は無いよ」

「ありがとうございます」

「…好きな子の好きな子を心配するなんて、君は優しいな…私には出来ない」

「…部長は…誰かを好きになったことありますか?」

「あたし?あたしは…恋はもう懲り懲りだからなぁ…」

遠い目をして悲しげに呟く。

「なんかあったんですか?」

少し間を起き、覚悟を決めたように息を吐いてから、聞いてくれる?と聞く。俺が頷くと、ずっと誰かに話したかったんだよねと悲しそうに笑って続けた。

「…あたしにも去年まで年上の大学生の彼氏がいたんだけどね…二股かけられてたのよ。しかもあたしが浮気相手」

「それは…辛いですね…」

「一年の時の文化祭でね、いきなり声かけられて、一目惚れしたとか言われて。見ず知らずの人に一目惚れしたとか言われてほいほい信じる私も私なんだけどね。周りがみんな、彼氏彼氏って言うから…早く作らなきゃって必死になってたのかも。
そのまま文化祭終わりにデートに行って、散々口説かれてね。あいつ口が上手いのよ…今思えば、初恋だって言ったくせに女性の扱いに慣れてるって時点で疑えって思うけど。…いや、私がちょろいだけなのかも。一回2人で食事しただけで好きになっちゃってさ…皮肉にも、2年目の文化祭の日、私とは本気じゃなかったって気付いてね」

そこまで話してぽろぽろと、部長の瞳から涙が溢れ落ちてきた。

「…ハンカチ、いります?」

「…大丈夫…自分で持ってるから。ごめんね、こんな話」

「大丈夫ですよ。気がすむまで話してください。…あ、何か食べます?辛い時は食べて忘れるのが一番だって友人が言ってたので」

「…友人って、ドワーフくんか。よく食べそうだもんね」

「ドワーフって。確かに小さいですけど。同じクラスの友人です」

「福田くんな。覚えてるよ」

ドワーフというのは想像上の小人。ファンタジー物ではよく見かける種族だが、大体小さなおじさんというイメージだ。鍛治が得意という設定もよく見かける。彼は150ちょっとだと言っていたが、それでも小春ちゃんとは10p以上差があることになる。

「…今は…こんなものしかないですけど、よければ。もし何か買いに行くなら付き合いますよ」

ポケットに入っていた飴を取り出す。ありがとうと御礼を言い、手の平に乗せられた飴の中から、グレープフルーツを選んで口に放り込んだ。

「…実はね、その元彼から、会いたい。謝りたいって連絡来ててね…私とよりを戻したいんだって。彼女とは別れた、やっぱり俺はお前が好きだ。って。もっとマシな嘘つけよって思うよね。…でも、嘘だってわかってても怖いんだ。会って話したら信じちゃいそうで」

普段はあんなにも頼りになる部長なのに。どんな時でも笑っていた部長のこんな顔は初めてみた。こういう時はどうするのが正解なのだろうか。

「…文化祭ももしかしたら来てるかもなぁ…やだなぁ…」

「…今でも好きなんですか?」

「…好きだよ。どうしようもないくらい。こんな辛いなら、恋心なんて要らないって思うくらい」

痛いほど分かる。叶わないとわかっていても、気持ちを捨てられない辛さも。いっそ、恋なんてしたくなかったという気持ちも。
けれど俺は、少なくとも、相手を嫌いになれる理由がある部長が、羨ましく、一瞬でもそう思ってしまった自分に罪悪感を覚えた。


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