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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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文化祭-2

「こんにちはー」

放課後。文化祭前の準備でほぼ集まれなくなるからと、今は自主練期間だった。部室には誰も居ない。誰かは居るだろうと思ったのに。先輩たちはほとんど来れないとは聞いていたが。まさか1人とは。
1人では読み合わせもできない。仕方なく、文化祭でやる劇の台本を読む。劇の内容は、魔女によって塔に閉じ込められた娘を王子が助けに行く話。文化祭は毎年、1日目と2日目で別々の脚本で、1日目は1、2年生のみで演じる。私が主演の王子、望はその側近、娘役も同じ一年の女の子。配役が決まった時、中学と変わらないねと望と笑い合った。2日目の合唱祭での劇は、三年生がメインで、私達は脇役。三年生はここで引退を迎える。
魔女は姫の実の母親。娘を愛するあまり、塔の中に閉じ込めた。そういう設定だ。魔女と娘が、百合香とその母親と被る。脚本を書いたのは部長だ。私達の事情は知らないはずだが。モデルにされているのではないかと思うほど重なる。元となったのはラプンツェルという童話だと、脚本を書いた部長は言っていたが。ロミオとジュリエットも参考にしたらしい。

「…険しい顔してんな、海菜」

「…わ…びっくりした…望か…」

「…1人?」

「うん。私だけ。誰も来なかったら帰ろうと思ってたから丁度良かったよ。読み合わせ付き合ってくれないか」

「ああ」

台本を置き、劇中の台詞を言う。

「魔女が彼女を塔に閉じ込めるのは、彼女を想ってのことなんだ。だから…ここから連れ出すことが正しいことなのか…私には分からない」

微妙なところから来るな…と苦笑いし、彼も台本を一度だけ確認し、すぐに閉じて台詞を続けた。

「…親と言えども、子の心を縛る権利まではありませんよ。彼女のことを想うなら、彼女の心を縛るのは間違っていると思います」

「…僕もそう思うよ。彼女に見せてやりたい。外の世界を。…しかし…魔女はきっと、娘を連れ出そうとする僕を悪だと思っている。下手に近づけば、僕を殺しにかかるだろう」

「…貴方は国の宝です。向こうが貴方を攻撃するなら…こっちも黙ってはいられないでしょう。私には貴方を守る騎士としての使命がありますから」

「…分かっている。けど、僕は…魔女もあの子も放って置けないんだ…」

次は騎士の台詞だが。台詞は続かず、ここで会話が途切れる。どうしたのだろう。

「…望?」

「…!ああ、悪い…」

上の空といった感じだった。

「…ちょっと休憩する?」

「…ああ…」

元気が無い。大丈夫だろうか。

「…大丈夫?」

「…大丈夫だよ」

「そうは見えないけど…」

「…あのさ、海菜」

「…うん?」

「…海菜はあの子のどこに惹かれたの?」

あの子というのは百合香のことだろう。

「…実を言うと、初恋の人にちょっと雰囲気が似てるんだ」

「…初恋も女の子?」

初恋の話は誰にもしていない。百合香にも。先に望に話したと言ったら拗ねるだろうか。そう思いつつも望の質問に答える。別に隠す理由は無い。特に彼には。

「そう。…みぃちゃんが私の初恋の人だよ。本気で…好きだった。今はもう、諦めてるけどね」

「ああ…空美さんか…似てるか…?」

「似てるよ。お嬢様みたいな上品な雰囲気が」

「ああ…そこか…要は見た目だな?」

「…そうかもね。…望の初恋は?」

「俺の初恋…」

黙り込んでしまう望。まさかとは思うが…

「…もしかして私が君の初恋だったりする?」

「…そうだよ」

彼はキッパリと言い切った。何だか恥ずかしくなり、言葉を失う。
彼も恥ずかしくなったのか黙り込んでしまった。
微妙な空気の中、望が口を開く。

「…あのさ、海菜」

何かを言いかけ、止める。

「…うん?」

「…いや、いい。文化祭…小桜さんと周るんだろ」

「あぁ、うん。そうだよ。百合香と、小春ちゃんと」

「…小春ちゃんって…ああ、あのダンス部の小さい子か」

「そうそう。あの小さい子」

小春ちゃんがこの会話を聞いていたら怒りそうだ。彼女は身長のことを少し気にしているようだから。私くらいの身長が欲しいと言っていたが…流石にそれは高望みしすぎだと思う。

「…お前と並ぶと凄いよな。身長差。同じ学年だとは思えん…」

「背の順になると一番前と一番後ろだからね…40pくらい差があるんじゃないかな…」

「…お前、俺とほとんど身長変わらないもんな…」

「むしろ私の方が高いんじゃない?私180」

「…179」

悔しそうな顔だった。思わず笑ってしまう。

「ほら」

「ほらじゃねぇよ。縮め」

「大丈夫大丈夫。流石にこれ以上伸びないって。てか、これ以上伸びたくない」

「そのまま伸び続けたら190超えるんじゃないか?」

「えぇ…それは勘弁してほしい…」

他愛のない話で盛り上がるうちに、時間が過ぎていく。それでも誰も来ない。

「てか、誰もこねぇな、ほんと」

「ねー。2人で練習してもなぁ…乗り気になれないよなぁ…帰ろうか」

「…彼女は?」

「部活。向こうも自主練だって言ってたけど…」

部室の扉が開く。顔を覗かせたのは、部員ではなく百合香と小春ちゃんだった。

「どうしたの、2人とも。部活は?」

「誰も来ないから帰ろうと思って。海菜ちゃん達は?まだ残る?」

「いや、こっちも今帰ろうと思ったところ。一緒に帰ろう」


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